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教授とわたし、そして映画の教授のレビュー・感想・評価

教授とわたし、そして映画(2010年製作の映画)
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勧められたホン・サンス。面白かった。

私小説風の語り口とメタ的な虚構世界。
映画という嘘の物語だからこそ語れる日常社会の中では言えないこと。
誰かと誰かが、生きているその世界の中で「こんな風に感じてたんだ」と驚くその瞬間。
特に起伏のない物語の中で、映画という嘘が満遍なく配置され辻褄の合わない不条理な心の有り様の物語。

ウディ・アレン作品のようなコメディ感と、登場人物。しかしホン・サンスはそれをより実態のない世界として空虚に描く。
そこで、語られるのは人生の空虚さと、その空虚さの中で自由になれない「恋」と映画について。

本作のように、省略し尽くされた表現で、CGを駆使したスペクタクルなどなくても、終盤に見せる特にオッキの語る物語の壮絶さ。
本作の中で語られてきたある種の切ない物語の持つロマンチシズムなど、単なる感傷に過ぎない、という女性側の視点。
「それでも、生きていく」という迫力が、何より大スペクタクル映画だった。
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