次男

the Future ザ・フューチャーの次男のレビュー・感想・評価

the Future ザ・フューチャー(2011年製作の映画)
4.3
年を取れば取るほど、未来は現実的で具体的なものになるとばかり思っていた。実際、それはそうなんだと思う。仕事とか住居とか多くのことが決まっていっているし、例えば少なくとも僕はいまキルティング職人としてフランス人の恋人とボリビアで暮らしてはいない。
それでも、まだ、未来といわれるものには靄がかかってる。まだ靄がかかっているなんて良くないと思っているけど、正直だとも思う。未来と呼んでいた期間に近づいたり、むしろ通り過ぎてしまうたび、シンプルに、怖くなっていく。靄は自分でかけているんだと思ってる。

変化が怖い。僕はずっとここにいたい。5年や6年前は、停滞していることが怖かった。だから、責任を取るであろう少し先の未来の自分に任せて先を急いだ。いま、そのとき押し付けた事事が覆いかぶさってきて、でももう先送りを繰り返す年でもないから、鈍感なふりをして受け入れようとしている。でも本音は、ずっとここにいたい。反面、停滞が怖いのも知っているから、つまり、未来は全部怖い。

そうやって、きっと、何匹かのパウパウを、死なせてしまってる。そしてきっと、いまパウパウはまた僕を待っていて、僕はまた死なせてしまうかもしれない。


…どうこう言えるのは少し進んでからだなあ。いまはまだ、怖い怖いとしか。

◆◆

友人が、猫を飼った。

ずっと楽しみにしていて、名前も先に決めていて、でもいろんな事情から、猫たちが家にやってくるのは、2ヶ月後になると言っていた。つけた名前は忘れてしまったけど、パウパウからとったと言っていた。

彼女は、未来の、明るいニュアンスじゃない側面に足を取られて、苦しそうだった。そして、パウパウからとった名前の猫たちを心待ちにしていた。

先日写真が送られてきた。猫は、むちゃくちゃ小さくて可愛かった。ばかみたいに猫の写真ばかり送ってきた。パウパウからとったという、何某という名の二匹の猫は、無事に彼女の家に迎えられたようだった。

彼女のことを思い出していた。この映画の、別のエンディングを観ることができたみたいだった。
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