りっく

デッド寿司のりっくのレビュー・感想・評価

デッド寿司(2012年製作の映画)
4.2
まずキャスト全員の頑張りに大拍手。
武田梨奈の圧倒的な身体能力による宴会場での爆笑アクション。
男どもをバッタバッタと成敗するキックが美しすぎる。
体がホントによく動くので、観ていてとても気持ちがいい。
可憐かつ勇ましい彼女の魅力にノックアウト。

亜沙美だって負けちゃあいない。
料理人との「フード映画」の名作『タンポポ』の爆笑パロディ場面。
若い女が両サイドで女体盛りする最中、「私だって負けてない!」と言わんばかりのハイクオリティすぎるロボットダンス。
しまいにはゾンビ化してしまった後、口から延々と酢飯を出し続ける頑張りっぷり。
もはや名誉もプライドもかなぐり捨てたヤケクソ気味の振り切れた頑張り。
本作のMVPは彼女で決まりだろう。

本作は寿司という食べ物を粗末に扱っているように見えるかもしれない。
だがしかし、ちゃんと井口昇は「オレたちの自慢されたい日本食・SUSHI」のレクチャーも忘れない。
「ネタに醤油をつけ、そのままネタを下にして舌へ乗せるのは邪道だ!」
「ネタを上にして、醤油をシャリに染み込ませるのが、寿司の食べ方でしょ!」
「握る時はネタとシャリを押し合って、酢をネタに染み込ませることで酵素が発生し、旨みがアップするんだ!」
正しい寿司の食べ方講座の時点で、口の中の唾液が抑えられなくなる。

さらに武田梨奈は続ける。
「タマゴをバカにする奴は許さない!」
「タマゴというネタが1番その店のこだわりが出るんだよ!」
彼女の熱い「タマゴ推し」に応えるかのごとく、本作ではタマゴ寿司が活躍しまくる。
他の寿司からイジメを受けたタマゴ寿司は、やがて「軍艦巻き軍艦」と一対一で戦うほど勇ましく成長する。
可愛い声で歌い出し、しゃべり出し、そしてピンチに陥る彼女を応援しさえする。
そのシュールな光景に爆笑しながらも、「タマゴ寿司」の萌えキャラぶりに魅せられる。
映画を観終わった後、無性に寿司屋でタマゴを注文したくなる。

後はエンドクレジットの「スタッフが美味しく頂きました」のテロップまで、井口昇のサービス精神のてんこ盛り。
エロ!グロ!アクション!ホラー!SF!コメディ!とジャンルの枠を軽々と越える井口ワールド全開。
名場面や名台詞の応酬に、場内の笑いも全く絶えず。
一般上映にもかかわらず、上映終了後に新宿武蔵野館では大拍手が起こった。
近年でそんな映画館体験を味わえる作品など、数えるほどしかないだろう。
「エンターテインメントとは、かくあるべき。」
そう心の中で思いながら、自分も拍手を送った和製エンターテインメントの快作・怪作。
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