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そして父になるのRAYのレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
4.0
“繋がっている”


本作は重要なテーマを描いています。
ただひとつのテーマではない、重要なテーマを描いています。


是枝監督の社会を見る目の素晴らしさに感嘆すると同時に、映画と言うひとつの作品を作り上げるにあたって、様々な問題を描きながらも心についての光や闇を繊細に散りばめながら描いていることに、あらためて、映画監督としての素晴らしさを再確認することとなりました。


新生児の取り違え。
絶対に起こってはいけないことだと思います。
しかし、実際に起きています。
そして、これからも起こり得ることでもあります。
どれだけ技術が進歩して、管理が行き届いたとしても起こる可能性はあります。
だからこそ、是枝監督はこの映画でこのテーマを描いたのではないかと思っています。


これからも起こり得る理由——。

それは、人が行うからです。
妬み、嫉み、それ以外の理由だってあるかもしれません。

その被害者となった時、ましてや、その事実を後になって知った時、そして、選択を迫られた時、人は何を想うのでしょうか。
この映画ではそんな問いをとても繊細に描いているのです。


“血”なのか“情”なのか。
この様な問いを迫られることは悲劇でしか無いと思います。
それでも、その問いについて真剣に考えた時、自分自身にとっての“親子”の意味や“愛すること”の意味を知る事になるのかもしれません。
問いの答えが出る程簡単なことではありません。
ただ、分からないからこそ、目に見えない“繋がり”を自分なりに大切に感じることが出来るのではないでしょうか。


生きることは大変なことです。
大変なのに、自分のことで精一杯の筈なのに、何故、家族を持つのか。
きっと、その答えも一人一人の中にあります。
とても感覚的なことであるのに、この映画を観るとそんなことまで考えてしまうのです。


素晴らしい映画です。

観て良かった。
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