3104

5月の後の3104のレビュー・感想・評価

5月の後(2012年製作の映画)
3.8
94年公開の「冷たい水」の続編的作品。

“的”と書いたのは直接の続編にはあたらないから。
確かに両作品とも70年代初頭が舞台で、主人公の男女の名はジルとクリスティーヌだ。しかしこのジルとクリスティーヌは同じ2人であるが同じ2人ではない。「記号」のような存在に落とし込まれている。

タイトルの5月とはフランスで1968年に起こった5月革命のこと。そのあとの世代、「政治の季節」の真ん中に間に合わなかった学生達の移ろいが描かれる。

「冷たい水」では同様の若き登場人物達、そして物語全体が繊細で不安定な描かれ方をしていたが、監督自身も年齢とキャリアを重ねたせいか、今作では(自伝的作品でありながら)どこか距離を置いた、傍観者的(冷めたとも)な視点で物語が紡がれる。
といってもこれは「パワー不足」「瑞々しさがなくなった」という批判~確かにそういう面もあるが~ではなく、ひとつの作品としてとても観やすいように「こなれている」とプラスに捉える部分であろう。

距離を置いた筆致の中で、ままならぬ運命や意志に流され、時に自分で道を選びそして次第に変わっていく登場人物達の姿が象徴的。

激しく行動しそして現実とぶつかり合う前半部と、各々の道を辿る(辿らざるを得なかった)後半部の対比がやるせない。ジルの苦々しくもある「変われなかった(not enough)」という科白がそれを端的に表している。

前作もロキシー、ジャニス・ジョップリン、ドノヴァンなど当時のミュージシャンの楽曲がいくつも流れたが、今作ではシド・バレット、ソフト・マシーン(劇中の科白にも登場)、ケヴィン・エアーズ、タンジェリン・ドリームなどより先鋭的なチョイスになり、使い方もより効果的になっている。