ひでG

さよなら渓谷のひでGのレビュー・感想・評価

さよなら渓谷(2013年製作の映画)
3.9
吉田修一原作。
原作は映画化前に読んでいたが、「悪人」「怒り」より僕はよかった。

3作とも、「何ともできないもの」の中で「もがき続ける人たち」のお話だけど、
本作の「もがき」はより切なく、哀しい。

「人は一度犯した罪や運命をいつまで背負い込むのか」て、重く、深いテーマを読者に突きつける小説だった。

そして、その映画化。
ポスターやスチールになっている真木よう子と大西信満が所在無さげに座り込むシーンが、この映画の全てを表している。

レイブ事件の被害者と加害者。
大変ショッキングな関係。
でも、そこに行き着き、二人で暮らさなければならなかった道のりが、本もそうだったけど、映画でも実に丁寧に描かれている。

だからこそ、「幸せになりそうだった」という終盤の言葉が切なく、哀れである。

原作もそうだったが、映画でも「省略とクローズアップ」が効果的に使われていると思った。

物語はある山あいの町で起きた子供の殺人事件から始まるのだが、そのことでなくその隣人である二人にグッとクローズアップされていく。この二人に関係していることだけに焦点が当たっていく。見事な展開である。

本作では役者陣のクオリティーの高さにも触れておきたい。

主演賞を獲得した真木よう子。激昂するところも沈黙するところも深い哀しみの池から抜け出せない絶望感が漂っている。
もともと上手い人だか、主演賞納得の力演だと思う。

相手役の大西信満。僕は全く知らない俳優さん。
深く押し黙った感じがとても良かった。
知らない俳優さんだからその感じが出たのかもしれない。
オダギリジョーや妻夫木聡ではちょっと作られた感じになったかもしれない。

キャスティングの成功だと思う。

事件の真相を追う大森南朋と鈴木杏も出しゃばらず、きちんと主張もしたナイスな助演だった。
ワンシーンだけだけど、新井浩文や井浦新も嫌な奴で上手いね〜

そんな役者さんの好演を引き出した大森立嗣さん、すごいですわ!

観て辛くなるだけの映画ですし、結論めいたことに達せず、そこが不満と思う人もいるかもしれませんが、良い映画だと思いました。
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