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まぼろしの市街戦のxoのレビュー・感想・評価

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)
1.8
戦時下におけるささやかな享楽。そこから浮かびあがる生きることの価値や活力。そんなようなことを表現したいんだろうとは思う。でも、全体的に白々しいというか浅ましいという印象が強い。

現実に絶望したから病棟に籠もっているってセリフだったり、ヒロインの娼婦って設定だったり、終盤の死体の山だったり、ラストの"名言"だったり。
十分なリアリズムを感じられる演出をしないうちにそういうことだけやって、見る側に感傷的な気持ちを抱かせようとしている。

「カッコーの巣の上で」もだけど、"精神病院の患者"っていうのを話の梃子として使うのは品がない。そういう人々に真摯に向き合うこともせず、単に"無垢"や"善良"って要素が欲しいだけでしょう? 実際のところ、本作の患者たちは精神的な疾患があるようにはとても見えない。

男性に従属的で、男性にとって都合よく振る舞うばかりな女性たちの描き方も気持ち悪い。何もせずとも男が無条件に好かれる世界って。。

物語としても、軍人たちの間抜けな様子が幾度も描かれるわけだけど、ちっとも笑えはしない。演出としての不自然さだったり、「いくらなんでもそれおかしいでしょ」なご都合主義展開のほうが先に立っちゃっていて、真剣に見る気が削がれるばかり。

巷では「カルト映画」だなんて呼ばれているそうだけど、少なくともそういう類の作品ではまったくない。狂気はないし、良くも悪くも収まりがいい。
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