荒野の狼

仮面ライダー対ショッカーの荒野の狼のレビュー・感想・評価

仮面ライダー対ショッカー(1972年製作の映画)
4.0
1972年公開の劇場版仮面ライダー第一作。32分と短い作品であり、TVシリーズの二話連続の話などよりも時間的には短い。当時、映画用に作られた怪人ザンジオーは、映画を見れなかった子供たちにとっては幻の憧れの怪人。本作では、ザンジオーは、数体の怪人が倒されてから地面から登場するのだが、期待していた未知の新怪人が姿をはじめて表すシーンだけに、視聴者のボルテージは上がる。本作で残念なのは、ザンジオーが強さを発揮するシーンがほとんどないこと。最初の闘いでは、ライダー一号(本郷猛=藤岡弘)と闘って人質の確保に成功するザンジオー。ここでは、人質を取られた本郷を中心とするライダーチームに与えた精神的ダメージは大きい。しかし、この場面が、仮にザンジオーが一号のライダーキックを跳ね返して、力で一号を倒して人質を強奪していれば、ザンジオーの強さが演出できたはずであるので残念。仮面ライダーシリーズは、その後、50年続き、シリーズの内容や仮面ライダーの魅力は、この当時に比べて格段に高くなったと言えるが、敵対怪人の魅力となると、ザンジオーのような当時のオリジナルの怪人と比すべき魅力的な造形のものが乏しいということは言える。
本作の他の魅力は、ダブルライダーと戦闘員が合計10台ほどのバイクでアクションをするシーンだが、バイクの数だけで視聴者を圧倒。これ以上に圧倒的なのが、崖の上に30体ほどの再生怪人軍団が現れるシーンで、これに対峙するライダーは二人だけなので、ライダー側に絶望的な不利を感じさせるシーン。この時の羽を広げるコウモリ男の不気味さは秀逸。現代のライダー映画であれば、ここでライダー軍団がラクに30人くらいでてくることを観客は期待してしまうので、本作と同じシーンが再現されても、今では恐怖感は小さいだろう。
怪人軍団を率いるのは死神博士こと天本英世(あまもとえいせい)で、1926年生まれなので、当時、46歳だが、老人に見えるメイク。この死神博士が、ダブルライダーに拉致されるのを空から救出するのが、空飛ぶ怪人のギルガラスとプラノドンで、怪人の特性と死神博士への忠誠が現れており、敵ながら本作でもっともカッコいいシーン。
他に、本郷の変身ポーズを使っての初めての変身(掛け声は新一号の「ライダー変身」ではなく「変身」。また、滝和也(演、千葉治郎)の後ろ回し蹴りは素晴らしく、当時のレギュラー陣の一文字隼人、おやっさん、ライダーガールズは安定した演技。怪人を倒してバイクで去るダブルライダーを背景にエンディングテーマが流れると、一緒に合唱したくなるほどの観客との一体性が生まれるラストは評価したい。
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