ninjiro

ウォールフラワーのninjiroのレビュー・感想・評価

ウォールフラワー(2012年製作の映画)
3.9
なぜ人は無力なの?

タフになんかなれっこない。
もし、そうだからって何か変わるの?


舞台は90年代と思しきアメリカ。
高校に入りたてのチャーリーは、
心に影を抱えた内気な男の子。
当初から予感した通り、やっぱり上手くは馴染めない。
イケてる奴らにとって、彼はただの寒い奴に過ぎない。
「僕にも友達がいたなら…」


大好きな曲を掛けながら夜通しドライブ。
思い出される、自分にもあった眩しい時代。
金は無かったけど、何の問題もなかった。
寧ろ、大人になった今では金はあっても、
あんな特別な時間は買えない。
今では法的にアウトな事もやった。
法や社会自体が、今よりずっと曖昧だったから。
細かくある必要がなかった。
結果として人に迷惑さえ掛からなければ。

各々の好きな曲の入ったテープ。
なんて甘酸っぱくて素敵な宝物だろう。
今ではネットを介してデジタル音源で、見も知らない人の作ったプレイリストまでが流通する時代。
しかし思えば、直接手渡されるテープには、その中の無音にすら込められた想い、曲の切替えの微かな音にも、「その人」が刻み付けられていた。

他愛のないノスタルジーに過ぎないが、
そんな愛すべき文化があったという事を、
私は忘れない。


僕は誰にも見向きもされない壁の飾り。

僕はいつもそっと壁際から眺めてる。
そしていつでも自問する。
返ってくる答えは期待してないけど。
僕は、居てもいいんだよね?


やっと見つけた居場所だって永遠じゃない。
直ぐに形を変えてしまうものだ。
激しかった思いも、飲み込まれていく。
君もきっといずれ、僕の知らない誰かに
心と身体を預けるだろう。
僕も君をずっと想い続けるなんて言わない。

君に言いたい。
でも、言えない僕は心で祈る。
どうか忘れないで、一緒に持ち続けよう。
この瞬間を、この想いを、僕らの胸に。
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