みかんぼうや

静かなる叫びのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.5
「灼熱の魂」が衝撃的だったドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品(彼の作品は2作目)。「灼熱の魂」前年に発表した作品。

私も3年弱住んでいたカナダにあるモントリオール理工科大学の銃乱射事件を描いた作品。カナダに住んでいて3年弱、アメリカとは比べ物にならないくらい、銃の存在を意識しない国で(もちろん日本よりは犯罪を警戒しますが)、銃規制もされていて銃声や銃事件の話を聞くことも3年弱の生活でたった一度だけだったので(一度はあるんかい!という感じかもしれませんが)、このような無差別銃乱射事件があった歴史を知り、なかなか驚きました。

銃乱射物としては「エレファント」「ニトラム」が頭に思い浮かびますが、本作を観ていて先の両作に比べると犯人のキャラクターの描きっぷりなどがだいぶ足りない印象がありました(ひたすらにフェミニストへの強い憎悪がフィーチャーされるくらい)。

それもそのはず、話が進んでいくと、なるほど、本作は被害者視点で語られていく作品なのだ、ということが徐々に分かっていくのです。

被害者視点で描かれているからこそ、事件後の話まで描かれているのは先の2作と異なり興味深く、また複数被害者の視点から描いた見せ方もヴィルヌーヴ監督の巧さでしょう(その分、犯人側のストーリーの厚みはやや落ちてしまうが致し方ないか)。

「灼熱の魂」ほどのインパクトや濃さは感じなかったものの、十分過ぎるインパクトのあるオープニングをはじめ、作品全体の陰鬱とした空気感や不安・恐怖の描き方など、ヴィルヌーヴ監督の才能を既に十分に感じさせる作品でした。
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