KANA

静かなる叫びのKANAのレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.5

ヴィルヌーヴ監督の初期作品。

実際に起きた「モントリオール理工科大学虐殺事件」をドキュメンタリータッチで。

日常を打ち砕く銃撃シーンは容赦ない残忍さで恐怖を通り越して呆気にとられる。
犯人の学生が何故そこまで牙を剥くのか、最後まで理解し難かったし、許せない。
フェミニストを敵視していると断言してたけど、どこか違う…そんなの言い訳に聞こえてしまう。
加害者の視点でその人物像に迫るかと思いきや、ポンと被害者のほうに転換し、それも複数にばらつくのでドラマとしてはどのキャラクターにも感情移入しづらかったような。

無責任な加害者、呪縛から逃れられない被害者…世の中はそんな不条理に満ちてるんだと改めて思い知らされ、鬱々…。
ただ、生き残った女性の新たな希望が見えるラストはほのかな光を感じられた。
子を宿すということでフェミニズムとは違う、ジェンダーという視点で考えさせられもして。

演出としては現代を敢えてモノクロで、台詞も音もミニマルに削ぎ落とし、とことんシリアスに、陰鬱に。
プラス、時間軸を所々前後にズラして見せていてハッとさせられる。
シンプルなようで結構凝っていて、ヴィルヌーヴの才能の蕾を感じさせるものが確かにあった。
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