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セッションズのyukkowbのレビュー・感想・評価

セッションズ(2012年製作の映画)
3.8
ポリオにより小児マヒを煩い、首から下が不随となり、一日のほとんどを「鉄の肺」の中で過ごすマークと、セックスセラピストの交流を描いた作品。

イーストウッドの『ヒア・アフター』を思い出すような、色がきれいでなめらかで癒される絵が続く。
出てくる人たちもみんなチャーミングでファッショナブル、でも映画内で妙にギラギラしてない。新しい人が現れるたびに癒される。
最初にマークが恋するヘルパーアマンダ超天使、その後のいつも真顔の中国人ヘルパーもいい。

セラピストシェリル役のヘレン・ハントのアラフィフの脱ぎっぷりが素敵で、彼女の体の綺麗さに勇気づけられる。

彼女の体のきれいさと演技の説得力がすごくて、頼りになるセラピストなんだろうなーと観客も完全に安心してるんだけど、安定感のむこうの静かな感情表現に、水気のある人間性を感じて少し切ない気持ちに時々なるのもよかった。

清潔感はあるのに潔癖な感じのしない、でも厭味に不潔だったりもしない、セラピーというのを尊重した性描写。

主人公が全身不随なため、セックスの「暴力的な衝動」というようなものとは遠い。
敬虔なカトリックなので、女性との関係に対して俗っぽい皮肉さや、女性を消費しようという感じも描かれない。シェリルも扇情的な下着を身につけてアピールしたりもしない。
初体験の相手の男性器が大きくて怖かったというスーザンの微笑ましい告白をふまえたりと、様々なポイントでマッチョな要素を丁寧に排除していくので、女性讃歌映画にも仕上がっていると思う。

「特別な主人公」の、頭の回転のよさやギャグや才能描写に頼らず、横にいる人たちをチャーミングで美しいキャラとして描かれている。

中国人女性ヘルパーのスーザンが、マークと一緒に他の障がい者のセックスをインタビューして「・・・」ってなってる時の感じ。一見堅物なのかなと思いきや、セラピーの前には丁寧にマークをきれいにしてくれて、コロンもつけてくれる。
彼女が選んでくれたシャツを褒めてもらい、コロンも褒めてもらうマーク。

男としてテキトーだけどまじめな励ましをくれる深夜枠のヘルパーの男性。
主人公の性の告白を聞き続け、時に「とにかくがんばれ」と励ましてくれるマジメな困り顔の神父。

神父が、ある日頭にバンダナを巻いてビールを持ってわざわざ会いにきて、「どうだった!?」とセックスセラピーの結果を聞きにくるシーンとか、細かい優しい萌えがきいている。

最後に出会う女性も独特の明るい美しさで、マークは女性の趣味が超いい。

性描写に関しては、いろんなサイトのレビューでも言われているけど、とにかく挿入が大事という扱いがちょっとだけ「?」だけど、これまで一切性経験を持てなかった対男性のセラピーなのだし、夫婦セラピーでもないし。
それに、その先を目指しそうになってしまって…という展開も、効いてると思う。

全体的に、「面倒をみてもらう」「ケアしてもらう」という快適さに焦点があててあり、彼の不自由なところ、不快なところよりは快適なところに一体感を感じるようになっているので、そこは疑問の残らないところではないけど、おかげで見ていて気持ちがいい。

ラストは泣きそうになる。春先にちょうどいい、安心感のある浄化系映画。
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