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インターステラーのyukkowbのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.3
娘に愛想をつかされても俺は行くんだ、という、「家族のために理解されなくてもやるべき仕事をしにいく俺カッコイイ」映画だとみなすむきには、それは誤解と言いたい。

本人にそのつもりはなくとも、パパは父であることを放棄した。普段の生活と仕事には生きがいとやりがいを見出せずにいたところに、ふってわいたやりがいのある仕事。人類と家族のためという強力な理由に後押しされて、退屈な地域生活、家庭におけるやりがいのない父の役割は放棄して祖父に丸投げ。今はそんなことより他にやるべきことがあるんだよ!と、娘に泣かれても魂のメッセージも聞かず、一方的に理解だけを求め、あんまり理解しあうことに手間もかけず、当然のように家庭から去って行く。

だって砂の街で周囲から低評価を受けてイマイチ先細りな父親をやってるより、NASAで尊敬される飛行士になるほうがいい。
このへん見ながら、パパに文句ばっかり言っていた。娘は妻じゃない。

パパが「子供の言うことにすぎない」とマーフの主張を全スルーしていたことと、その後マーフがパパを諦め無視しきっていたこと。
それらと、クライマックスにパパとマーフが死ぬ気で次元を越えて、お互いの伝える力と理解する力を信じ、「一番大切なことを伝え合う」ことは対比になっている。

パパが本当に「父になる」のは、娘に「伝えるべきことを伝える努力を死ぬ気でする」クライマックスがあるから。本当に行かなければよかったということを理解し、その上でできること、なすべきことをするからだ。

あの時、二人は初めて親子である絆を再構築・再生しているのであり、ようやく理解のない娘に父のがんばりがわかってもらえたとか、ずっとパパが父親として正しかったのではない。
男にはやるべき時があるから、そういう時には家族は捨てていいのだということではない。

世界のため家族のためという理由に裏打ちされた、どこか身勝手な自己実現の旅。でも、その先で真に父親であるということに向き合うことができたから、そしてそれを賢い娘が受け入れてくれたから、本当の意味での父になることができたんだと思う。

自己実現で父親にはなれない。
子供が実際にそうだと認めないと、父にはなれないのだ。娘は父を父にしてくれただけでなく、最後には慈愛をもって包んでくれさえする。

父とは違い、「あの家に、父親として、農夫として、限界状況でも留まり続ける」息子が父親として機能しなくなるのも描いてあり、宇宙へ行かないことが正しかったとは描かれていない。
って息子、もともと妹(女?)をバカにしてたり、言われたことしかできないなどちょっと愚鈍に描いてあったとはいえ、父を反面教師にした結果あんな感じになってかわいそう。
息子は父としてあの土地と心中しそうになってたけど、間に合ってよかった。


津波とマン博士とブラックホールからの本棚はそれぞれエピソードが楽しくて、夢見るように長い映画が見られて気持ちよくてよかった。

人工知能ロボットのデザインはとっても疑問が残るけど、最後には愛着が。モノリスがクネクネ二足歩行で歩くのは非効率すぎないのか…と思ってずっと違和感があったけど、一緒にブラックホールに飛び込んだから好きになった。
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