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フリークス(怪物團/神の子ら)のTSのレビュー・感想・評価

4.2
【現代の倫理観では到底作れない問題作】88点
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監督:トッド・ブラウニング
製作国:アメリカ
ジャンル:ドラマ
収録時間:65分
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これはいろんな意味で凄い作品です。まずは貴重度が高い。構成からしても物語からしても、現代では到底作り得ない作品であり、作ろうとしたら大バッシングを受けるでしょう。人権保護団体というものすらなかった当時でさえ、気分が悪くなり退場した人がいるほど。イギリスでは以降30年上映禁止となった問題作であるのです。

では何が問題なのかというと、フリークスをそのまま出演させてあり得ない物語展開を行なっている点であります。フリークスという言葉は奇しくもここ数ヶ月で有名になったと思います。というのも、『グレイテストショーマン 』で言及され、彼らが活躍したからです。フリークスとは奇形者のことでありその種類は様々です。やはり歴史的に差別を受けてきた存在であり、この時代でも『グレイテストショーマン 』でも示されている通り、見世物小屋で大衆の見世物とされていた存在です。人は動物園でさまざまな動物を見るのを好むように、自分とは異なる存在を檻の外から見るのを好みます。ただし、檻の外というのがポイントであり、これが檻の中となると人は「恐怖心」を生み出すのです。何故ならば自分とは異なる存在なので、何をしでかすかわからないからです。

さて、物語はシンプルであり、結婚詐欺をしようとする女性に対してフリークスたちが仕置きをするというもの。しかし、この物語構成も今では絶対作れない。フリークスたちがそうではない人たちに復讐をするという設定は、批判主義者たちに一層の刺激を与え、積み上げてきた人権感覚を崩壊させる恐れがあるからです。
そういう経緯もあり、ここ最近でフリークスなどの障がい者を扱う作品では必ずと言っていいほどお涙頂戴、彼らに共感できる要素が入れられています。

それらを全て無視した作品が今作であり、フリークスをこれでもかというくらい罵りますし、その反撃の狼煙も末恐ろしい。ラストのシーンなんて絶句であります。正直に言うと、ラストあたりのフリークスたちに恐怖を感じました。これが本音なのでしょう。
恐らく今作で示される思想・行動というのは人間の本質の内なのかもしれません。悲しきかな、人は差別しないと生きていけない生き物。今でこそ差別はいけないという人権感覚が生まれていますが、歴史的に見てもそういう感覚がない時代の方が長かったのです。ということは思想を矯正しないとほとんどの人間は元からそういう思想を持っているということであるのです。

現代の倫理観では到底作れない作品。そういうことを鑑みると、当時の倫理観を知ることが出来る貴重な作品です。ヒゲの生えた女、小頭症、四肢疾患の方々が登場し、差別とか関係なしに映像的に驚く部分も多かったです。『國民の創生』とまではいかないかもですが、評価の分かれる作品でありそうです。
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