韓国系デンマーク人で脳性麻痺を持つ二人のコメディアンとともに異文化交流と称して北朝鮮を訪れたマッツ・ブリュガー監督が、その様子を撮影したドキュメンタリー映画。
北朝鮮の内部を撮影したという点では(特に当時は)貴重なのだろうが、その独裁国家としての闇の部分を暴くというところまでは達していない。撮影許可が下りた場面に基づいているので仕方ない部分もあるが、北朝鮮に関する前提知識をふまえずに見ると、それほど緊張感があるわけではない。例えば、案内役の女性が常に監視しているというナレーションが入るが、映像を見る限りでは単なる案内役にしか見えない。二人のコメディアンによるコントが北朝鮮を称賛するような内容に変更されていく点は興味深いが、北朝鮮以外でも独裁国家ならばこういうことはあり得るので、これだけで北朝鮮が異常とは言えない。
それよりも、ドキュメンタリーとしての公平性に欠けるようなアプローチのほうが気になった。北朝鮮に対する監督自身の先入観に沿うような映画を撮りたかったが、撮影した映像だけだとそう見えないので、ナレーションなどで無理やりそのように仕向けているように見えてしまうのである。北朝鮮をルーツに持つ障害のあるコメディアンを出しに使うというやり方も、個人的にはあまり賛成できない。マッツ・ブリュガー監督の北朝鮮ものだと『THE MOLE』のほうが、断然良い出来だと思う。