The Red Chapelの作品情報・感想・評価

The Red Chapel2009年製作の映画)

製作国:

上映時間:88分

4.7

「The Red Chapel」に投稿された感想・評価

Satoukibi

Satoukibiの感想・評価

4.7
北朝鮮のドキュメンタリーなんて見たことなかった!デンマークすごい。これは2人のコリア系デンマーク人コメディアンが実際に北朝鮮に行って北朝鮮人とイベントを通じて交流するという企画を、厳しい検閲を受けながらも撮影した記録。ジャーナリズムじゃなくて、コメディを北朝鮮でやろうって言うのが物凄く新鮮。コメディだからこそ、フィルムを没収されなくて済んだ。おそらく北朝鮮の人にとっては、当たり障りのないと思われただろう数日間の記録の端々で、北朝鮮という国の体制のようなものが浮かび上がってくる。

印象的なのは、2人のコリアンデンマーク人のうちの一人が身体障がい者であること。上手く話すことは出来ず、声を聞けば障がいがあることがわかるのだが、彼に対する北朝鮮の人間の反応が面白い。ものすごく正直に言えば、障がいすらも笑いにしようとする2人のコメディは…何が面白いのかさっぱり分からない。日頃障がい者と接することのない私には、見ていて申し訳ないような心持ちにさせられる。こういう気持ちになる私が既に障がい者を差別しているのかしら。…それが障がいを持つものは生きられない北朝鮮では、どんな反応だっただろうか?北朝鮮の人々は、男も女も、よくテレビで見るようなチマチョゴリの女性たちも、必要以上に、障がいを持つ彼に優しい。案内役の女性など、出会ってまだ30分も立たないうちに、彼を息子にしたい、可愛い、私なら絶対彼を見捨てたりしない、と言う。しかし彼はと言うと、数日目にはひどく取り乱してしまう。北朝鮮の人々の笑顔や優しさが実は上っ面だけのもので、本当は障がいをもつ彼を下に見ていることをしっかりと感じとっていたのだ。

先述の交流イベントでは、イベントの主催者が、コント内容に執拗に干渉してくる。障がい者の彼は話すことを許されず、始終笛を吹くだけ(もちろん、普段は優しく接しておいてだ)。彼らのコントは全く尊重されずに、"交流して仲良くなりました、金正日万歳"で締めくくられる。
"一つの正しいもの"だけしか許せない、という思考回路があるらしく、そのままの姿を愛せない北朝鮮の人々は、結局全て作り物にしてしまう。他にも、美しく、才能ある北朝鮮の子どもたちの奇妙な笑顔の裏に隠された恐怖心など、色々なものが垣間見えるし、今まで見たことのなかった北朝鮮の人々の姿が、スクリーン上にある。本当に面白い、というか悲しい、素晴らしいドキュメンタリーです。