こたつむり

パトリオット・デイのこたつむりのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
3.8
「我々はテロリズムには屈しない」
その想いを強く描いた物語。

2013年、ボストンマラソン大会。
ゴール付近で鳴り響く音。振動。粉塵。破片。
それは無辜の観客を襲った爆破テロ事件。
本件では3人が死亡、282人が重軽傷を負いました。ご冥福をお祈り申し上げます。

そして、調べてみると。
アメリカ本土で起きたテロとしては、本件はあの“9.11”の次なのですね。そりゃあ、映画として語られるわけです。アメリカ人の怒りを凝縮するような作品に仕上がっているのも当然なのでしょう。

だから、とても丁寧な描写でした。
本作は複数の視点で綴られる群像劇。
しかし“時間と場所”を示すテロップで誘導してくれますから、物語に迷うことはありません。何しろ、ゴールは明白。「テロに挫けない」という想いに達すれば良いのです。

また、その複数の視点の中には。
犯人側の視点も織り交ぜて“中立的な描写”であることをアピールしていました。確かに「アメリカは傲慢だ」と叫ばれる昨今、これがあるだけで印象は全く違いますからね。

そして、そんな中で描かれる住宅街の銃撃戦。
いやぁ。見事なまでに恐怖の感情を煽られましたね。劇中で「地下室に退避しろ」というセリフが出てきますが、日本では地下室が常備されていませんからね。「自宅の前で銃撃戦があったら、どこに逃げれば良いのか」なんて本気で考えてしまいました。

…やはり、表通りに面していない部屋に逃げ込むのが重要でしょうかね。でも、木造家屋の壁は銃弾が容易に貫通しそうですから…RC造でなければ、鉄板補強や防弾ガラスは必須なのかもしれません。ただ、爆弾が使われたら、それらも無駄になるのですよね…。

まあ、そんなわけで。
今やテロリズムは日常のすぐ隣。
悲劇を繰り返さないためにも…また、反戦意識を高揚させるためにも。鑑賞すべき作品だと思いました。

ただ、あえて言うならば。
映画というか再現フィルムと呼ぶに相応しい方向性。ドキュメンタリーを観る気持ちで臨んだ方が良い作品です。
こたつむり

こたつむり