Foufou

アルプスのFoufouのレビュー・感想・評価

アルプス(2011年製作の映画)
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やはり『イディオッツ』なんかを撮っていた頃のラースを想起せずにはいられません。

なにが映画で起こってるのか、中盤まで見ないとわからないところまで。で、わかったら、ああ、なるほどね、と得心がいくところもそっくり。少々忍耐が必要なだけで、難解、ということもないわけです。

本作は、前作『籠の中の乙女』の姉妹編というべき作品でしょう。『籠の中〜』が虚構を現実に押し込めようとして虚構が破綻する物語とするなら、本作は現実を模倣するうちに現実そのものが破綻する物語とでも申しましょうか。両作とも「この世はすべて芝居である」という通奏低音を持ちつつ、演じるという行為のベクトルが真逆になっている点が興味深い。「芝居によって埋められるのは外部である」というメッセージは、十分我々の世界に対する皮肉足り得るし、「芝居によって埋められるのは家族という内部である」というメッセージもまた同断なのである。

元々が、アメリカとか資本主義とか社会主義とか、寓意的にとらえる気質の監督だということが、二作を見てよーくわかりました。あと、妙なこだわり(作家性?)があるのも面白い。「機械的に服を脱ぐ」とか、「奇怪な踊りを踊る」とか「クンニをする」とか、ほとんどの作品で反復してるんじゃないかしら。

『籠の中の乙女』を見たときに、この監督は監禁とか幽閉とかお好きなのかもと思ったんですけれど、本作ではそうしたテーマは顕在化されませんでしたね。しかし、そこは、まぁ、ほら、あれですよ。彼らもまた、アルプスを演じているわけで。最後の最後のセリフにその目配せがある。

演じることから逃れられないという点では、生きることがすでにして監禁なわけだ。
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