阪本嘉一好子

アリ・ザウアの阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

アリ・ザウア(2000年製作の映画)
5.0
最初、この映画はインタビューから始まった。モロッコのカサブランカの貧困地域の路上に住んでいて学校に行っていない子供の一人にレポーターがインタビューしている。この少年、アリ、Ali Zaoua (Abdelhak Zhayra)は15歳で、毎日何してるのと聞かれると、街を見てるんだよと答える。水兵になる夢を抱いているが、家を出たのは目を取られるからだと伝えている。お金のために母親が子供の目をうるのかと思って映画を観ていたが、真相はつかめなかった。アリの大きな夢、でも、それとは逆の現実の世界。それをリポーターが直撃している。
アリは仲のいい友達クインタKwita(Maunim Kbab)に、ここを離れて島にいくと。そして、太陽が二つある土地に、このコンパスが東西南北を教えて誘導してくれると。なるほど、夢(これは、アリが小さい頃家でなんども聞いた話)は大きく広がるが、アリはチンピラ(子供のギャング)の投げた石にあたって死んでしまう。Kwitaを中心に正式なモスリム 流の葬式をおこないたい。アリを王子様のように葬りたい。でも、子供たちは肉が腐ったような匂いだし、礼拝を指導する導師(イマーム)じゃないので祈れないとかいわれ。アリと仲が良かった漁船の水夫ハミッドにクインタたちは助けてもらう。クインタたちはお金をためてセーラー服を用意したり棺桶を作ったりして、アリと一緒に船で旅に出る。

この路上に住んでいる子供たちはクインタたち四人だけがグループになっていて、残りの路上の子供達はギャングのボスDib、 (Saïd Taghmaoui)が取り仕切っていた。この四人は家族のように喧嘩をしても助け合いながら生活をしている。アリは毎日街をみてるとレポーターに答えたが、アリの死によって残りの三人はアリを王子様にして葬りたいという目的を持って生活を送る。貧しくも住む家がなくも目的を見つけて人間としていきるこの三人の子供の行動は敬服に値する。*魔術的リアリズムダッチの作品で子供の夢と、子供の現実の姿が融合して、切ない気持ちになる。


*魔術的リアリズム(まじゅつてきリアリズム)とは日常にあるものが日常にないものと融合した作品に対して使われる芸術表現技法で、主に小説や美術に見られる(ウィキペディアからの抜粋)