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降霊 KOUREIの盆栽のレビュー・感想・評価

降霊 KOUREI(1999年製作の映画)
3.2
Jホラーの雰囲気バッチリ


 元々テレビドラマ用として製作された『降霊』の劇場版。たしかに作りが映画にしては物足りない単調な作風。「平凡な人生」から脱却しようとした夫婦に舞い込む負の連鎖。展開としては胸糞悪いホラーでもあります。

 霊能力を持つ妻と効果音技師の夫。霊能力持ちがいる時点で「普通の夫婦像」をイメージしにくい。もはやここをミスリードだと思わせる手法ならアッパレです。

 何度も霊が現れるシーンがあるのですが、『回路』同様のゾクっとする怖さがあります。効果音無しで突然映る。もはやそこに意味はない。"静"と"無"が共鳴し合った瞬間の怖さはJホラーでしか表現出来ない神業だと思っています。特にインパクトあったのはファミレスでの一幕。大杉漣のその後が気になるところです。

 とある少女誘拐事件が本作の軸になるのですが、腑に落ちない点が多すぎるからかコメディにしか見えなくなったのが残念ポイント。ですが、意外な形でこの事件と関わることで露わになった主人公夫婦の本性。これは見もの。承認欲求に駆られる妻と精神的にも追い込まれる夫。人間らしさの良い対比になっていたと思います。だからこそラストの呆気なさは本作とマッチしています。

 正直、黒沢清監督の他ホラー作品で比べると『回路』には到底勝てない出来。雰囲気作りは出来ているのに、『回路』のような圧倒的恐怖が足りない。だからといってサスペンスの強さもイマイチなのでジャンルの方向性を巡って路頭に迷っている印象。良くも悪くも"凡作"で止まっている一本。清ホラーを堪能したい方は『回路』オススメ!

 黒沢清作品は「呆気ない展開」が多いことに気付いた。

2024.5.13 初鑑賞
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