グラビティボルト

ある過去の行方のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

ある過去の行方(2013年製作の映画)
3.5
あまりにも陰惨なメロドラマぶりに流石に辟易しつつ、冒頭の空港のガラス越しに向き合う男女のショットから一貫して、ガラス越し、自動ドア越し、二階の窓越しに庭の子供達を観る・・・等フィルターを一枚噛まして他者を見詰める視線が演出されている。

「表面上距離が縮まっているように見えても引きの画で心の距離を意識させる」とか、単調になりそうな男女の怒鳴り合いも、中途半端に相手の心に引っかかる台詞を互いに言わせることで、部屋を出かける〜やはり戻って言い返す。の繰り返しで役者をリズム良く動かしてギリギリ飽きさせない。見事。
例えば、元奥さんが煙草を吸う為に窓を開ける、元夫は娘を探す為にドアへ向かおうとするが・・・っていう一連の応酬は面白かったし、ごくごく素朴なメロドラマをスムーズに語り部をチェンジする事で特異に魅せる手際も凄い。
でも、面白いかと言われると言葉に詰まる。
基本会話の応酬に終始する作劇に上手く動作を付けてるとは思うし、例えば「煙草を吸う」というアクションの意味合いが、尺が進む毎に変わる構成は見事で、元奥さんの身体の状況を明かすタイミングとか人の心を巧く揺らす作りになっている。

良く出来てるのは間違いない。
ただ、海のロングショットが冴え渡って、ヒロインが画面から消失する「決定的な瞬間」が捉えられていたという意味で、「彼女が消えた〜」の方が好きかな。