そーいちろー

愛の亡霊のそーいちろーのレビュー・感想・評価

愛の亡霊(1978年製作の映画)
3.5
フランス語版の原題は「情欲の帝国」とでも訳すべきか。

情欲によって結びついた二人が、閉鎖的な村社会において禁忌を犯し、その罪の重さに恐れつつ、愛に身を焦がし、破滅にまで至るその様を描いた映画。

確かな映画表現と、少し歪んだようなアングル、幻想的な映像表現。さらに大島渚自身が生涯こだわり続けた日本的共同体への閉鎖性と善悪の彼岸を問い続ける姿勢は不変的。政治的な情念それ自体が愛であるかのような映画作りは、孤高としか表現しようがない。

しかし、松竹ヌーヴェルヴァーグ時代から創造社時代において、この国、いや世界の映画史においても唯一無二とも言えるメッセージ性と映画表現の奇跡的な両立をやってのけた大島渚の一連の作品群と比較すると、そこには少し自己模倣も見られ、少し期待外れであったのは確か。

同じようなテーマで言えば、儀式の緊張感や完成度の方が高いのではないかと思えた。

ある意味でジャパニーズホラーの先駆けか。

大島渚ファンとして映画館でフィルムで観られた、という喜びは大きい。
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