ハター

小さいおうちのハターのレビュー・感想・評価

小さいおうち(2013年製作の映画)
4.4
おもしろい映画。とても楽しませてもらいました。とにかく魅せ方がニクい。作品を何十本と手がけてきた匠の腕が光っています。
まず印象的だったのは冒頭の妻夫木聡の喪服にスニーカーのスタイル。そしてマッサージのシーンでの松たかこの浴衣の裾から出した脚のアップ。今後の展開や人物像を画によって細かく表しているおかげで、その後の物語をより楽しむ為の良い味付けになっていました。また、倍賞千恵子扮するタキと、孫役の妻夫木聡が自叙伝の内容について対峙するシーン。ここは個人的に好きです。現代教育で得る戦時の知識を孫が祖母に訴えるが、女中という身だった当時の祖母が居た世界は小さいおうち。戦争の真っ只中でありながらも、我が身を置いたその場の出来事の記憶が色濃い。現実にもきっと庶民には庶民のドラマが数多くあった事だろうと考えると、改めて戦時の事に興味が湧いてきます。また橋爪功の役柄と台詞にはストーリーと関係の無いメッセージ性を感じ、ある意味、重要な位置づけにいたと取れます。ありのままで飾り気のない人間模様を登場人物の一人一人に感じたのは、役者の演技力しかり、監督の人柄と手腕の賜物でしょう。音楽も久石節がいい塩梅で効いていて、琴線に優しく触れてきます。ああ、観て良かった。そう思える作品でした。
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