荒野の狼

小さいおうちの荒野の狼のレビュー・感想・評価

小さいおうち(2013年製作の映画)
5.0
語り役のタキ(倍賞千恵子)が、妹の孫である妻夫木聡に書き残したノートから、昭和初期から戦後までを女中(若い頃のタキを演じるのは黒木華)として働いた社長の家の出来事を振り返る2時間ほどの映画。現代のシーンと昭和のシーンが無理なく織り込まれており、戦勝に沸く時代から東京大空襲に向けて緊張が徐々に高まり、飽きさせない。
黒木は抑えた演技で、ベルリン国際映画祭の最優秀女優賞に輝いたが、実際の主演は社長夫人を演じる松たか子。松は、前半は、絵に書いたような上流階級の良妻賢母なのだが、後半には激しい情熱的な恋に焦がれる女の内面を見事に演じてみせる名演技。相手役の吉岡秀隆(43歳)はナイーブな青年を演じているが、大学生ほどの役を演じている妻夫木(33歳)同様、実年齢より、10-15歳ほど若い役柄なので、多少の違和感を感じる人もいるかもしれない。
現代編には、夏川結衣や小林稔侍が軽い役で登場するが、米倉斉加年が、鍵になる人物を見事に演じており、映画のラストを締めている。昭和初期の世相がよく描かれており、妻夫木と倍賞の会話が、たくみに史実の解説にもなっていて時代背景の理解を助ける(妻夫木が戦中の過去を美化しがちな倍賞の思い出話を歴史的事実に基づき修正している点など好感がもてる)。
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