荒野の狼

るろうに剣心 伝説の最期編の荒野の狼のレビュー・感想・評価

5.0
「伝説の最期編」は、「京都大火編」と連続しており、片方だけを見ても意味をなさないので4時間の長編映画といえる。本作では、格闘シーンがスピードはあるのだが、力強さに欠ける(武道の経験がない俳優なので仕方ないが)点がアクション映画として物足りないと思っていたが、本作の敵役の志々雄を演じた藤原竜也のラストのアクションは包帯を巻いているコスチュームの印象もあり人間離れした迫力。振り回すと火焔がでる無限刃の迫力、登場シーンからの怪奇性から、最後には哀愁まで感じさせる演技も印象的。
第一作と同様に残念なのは、ユニークな登場人物が多いのにも関わらず、それぞれの背景がほんの数秒しか語られないこと。「京都大火編」では、不要なシーン(たとえば、神谷薫と、その弟子の子供が殺人集団と互角以上に戦う陳腐な殺陣、伊勢谷の主筋とは無縁の役どころ)が多いので、これらをカットして、登場人物の丁寧な説明に当てていれば彼らへの共感も増したであろうだけに惜しい。
本作で、評価できるのはアクションだけでなく、佐藤と師匠の福山雅治の人が生きる意味を考えさせる会話。「自分の命は自分だけのものではなく、その重さをわかった上で、生きようとする意志は何よりも強い」と福山は佐藤に説く。「死ぬ、あるいは、死んでも惜しくない」という悲壮的な立場をとりがちな現代人にとっては、そこを一歩進めて、「生きる意味を知って生きて行く意志は自分を強くする」のだというメッセージは、生きて行く上での支えになるもの。

以下は映画よりの抜粋。

佐藤:生きようとする意志?
福山:お前の命も一人の人間の命。その重さがわかってこそ奥義の道は開かれる。
佐藤:俺の命
福山:その命はお前ひとりのためにあるのではない。

福山:生きようとする意志は何よりも強い。約束しろ剣心、お前のその命、決して無駄にはしないと。

神木:強ければ生き、弱ければ死ぬ。それだけだ。
佐藤:勝負はついたようだな。
神木:僕が間違っていたのか
佐藤:いや、勝負に勝った方、つまり強いものが正しいというのが志々雄の理屈。一度や二度の闘いで、真実の答えがでるくらいなら、誰も生き方を間違えたりはせぬ。真実の答えはおぬし自身が、これからの人生の中で思い出すでござるよ。
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