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ぼくたちの家族のsacoのレビュー・感想・評価

ぼくたちの家族(2013年製作の映画)
3.7
途中で雑念が邪魔することなくこんなに真剣に最後まで画面にくぎ付けで映画を観たのは久しぶりな気がする。
演じる俳優陣がみなものすごく自然体で、リアルだった。細かいディテールにまで拘っていたと思う。ふがいのない父親を前にして、自分が踏ん張らなければと感情を押さえて食いしばる長男浩介と、最初は皆を茶化しながら精一杯強がる次男の俊平。同い年頃の息子を持つ身として見ていて胸が痛くなる。バラバラに思えても、初めからそうではなくどこかですれ違ってきていた家族ならば、あるきっかけがあれば、団結する、それが肉親を思う愛情なんじゃないかなと思う。
どうしようもなく八方塞がりの状態でも、プッと吹き出すようなやりとりがあったり、そういう事って逆にリアルだったりするなぁと、私の父や祖父の死に接した時の事とか思い出した。
ラッキーカラーやナンバーで事がうまく行くや、長男の転職が決まる辺りはご都合主義とも思えるが、そういうストーリーの中で、鑑賞する側がこの映画の描きたい事は何かを汲み取ることが出来れば、それでも良いんじゃないかなと思う。
手術が成功した時、緊張の糸が切れたように泣きじゃくる俊介にもらい泣きをしてしまった。
現実は、ずっと厳しいものだけど、気にやんで落ち込むのではなくて、一か八かでがむしゃらになる強さも大切だなあと思った。

奇跡的な話だけど、良い家族映画を見せてもらったなぁと思いました。

石井裕也監督『舟を編む』も◎。
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