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物語る私たちのペインのレビュー・感想・評価

物語る私たち(2012年製作の映画)
5.0
本作『物語る私たち』でもって、
サラ・ポーリーはアニエス・ヴァルダやアリス・ギイとかと並び語られるべき偉大な女性監督になったと言える。

私的にもドキュメンタリー作品としては、『オーソン・ウェルズのフェイク』に匹敵するオールタイムベスト級の1本となった。

両親が共に俳優で、自らも子役時代からテリー・ギリアムの『バロン』等に出演し、長年女優として国際的に活躍するかたわら、『アウェイ・フロム・ハー』『テイク・ディス・ワルツ』等で監督業でもその才能を発揮し出していたサラ・ポーリーが、自身の家族の歴史を見つめ、彼女が幼い頃に亡くなった母親の人生と自らの出生の秘密に迫っていく探求の道のりを記録(5年間!)し、それを長年映画に携わってきた彼女なりの方法で語ってゆく“驚異の”ドキュメンタリーだ。

『アウェイ・フロム・ハー』『テイク・ディス・ワルツ』の時点でも、“お前さん本当に20代か!”というような圧倒的な達観を見せつけてきたが、特に本作『物語る私たち』における、人間の深淵を覗き込み、深層心理を炙り出す手腕・及び映画的純度の高さは、“ベルイマン級”などと言っても大袈裟ではないかもしれない(※ちなみにポーリーはベルイマンが最愛の監督)。

とにかくポーリーの視点は容赦がなく、“ここ触れんといてくれ”という部分をグイグイ攻めの姿勢で突いてくる。終盤には挙げ句の果てに父親から、“お前さん人のことはあれもこれもと掘り起こすが自分のことは見えているのか”というようなことを言われる始末(笑)

今年公開の『フェイブルマンズ』での、ミシェル・ウィリアムズ&セス・ローゲンが『テイク・ディス・ワルツ』の夫婦じゃないかっ!と話題にもなったが、奇しくも本作『物語る私たち』もかなり『フェイブルマンズ』に通底するものを描いている。もしかしてスピルバーグって無茶苦茶サラ・ポーリー観てるんじゃないか?と思ってしまう程。

今年公開の最新作『ウーマン・トーキング』は、今思えば原作付き且つ完全に“フランシス・マクドーマンド企画”によるもので、これまでの“超絶オリジナル”な3作とは全く毛色が異なる。更に次回作は『バンビ』の実写化を手掛ける話もあり、“職人監督”としての道を歩み始めているようにも思えなくもない。
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