ハター

グランド・ブダペスト・ホテルのハターのレビュー・感想・評価

3.5
コメディ、ロマンス、アクション、サスペンス。そしてファンタジーでノスタルジー。色々な要素をアソートにしたような映画でした。
赤やピンクを基調としながらもその強い配色が目に刺さるは事なく、絵に描いたような構図が休む事なく連なっては物語が躍動する。固定カメラで見せるドタバタ劇は例えるなら”美しすぎるドリフ”。

豪華キャストが揃い踏み。知ってる顔が登場した時はやっぱり楽しいですね。演技がキレキレのエイドリアン・ブロディ、メイドコスがキュートなレア・セドゥ、ちょい役にも程があるビル・マーレイ。しかしハーヴェイ・カイテルが出た時、過去の出演作の真面目な役柄を思い返してしまい危なかった。明らかに笑い所じゃない時に笑いを堪える事の辛み。あと最近ティルダ・スウィントンの地顔を見ないな、などと考えたり・・。
主役のレイフ・ファインズは良い俳優ですね。ピンク色のホテルで”ピンクなおもてなし”をするコンシェルジュ。まずこの遊び心がいやらしい(良い意味で)。この破天荒な役柄において一挙一動に抜かりなく、見事と言わんばかりのスキルを感じさせます。魅力的なキャスティングは勿論、テンポの良さと目に楽しい演出の数々がスクリーンの中の世界へ誘ってくれました。

でもただ楽しい〜可愛い〜で終わる作品を映画館へ観に行くほど私は心がピュアじゃありません、悲しい事に。事前にこの映画には歴史テーマがあるという触りを知ってしまっていた事もあって、性格の悪い私はファンシーなびっくり箱を楽しむ傍ら、裏を探りながらの鑑賞を始めてしまいました。がしかし、これがなかなか読めず。戦間期、軍事支配、ブダペストの名前、でも舞台設定は架空の国。何となくの予想は出来ますが、観終えた後に内容を反芻しても結局見えてこず。後に調べて、漸く消化不良を解消。まさかこういった意味を持った作品だとは、知って成る程な事でした。
喜劇に見せつつ悲劇を描いていたとは。
ハター

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