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グランド・ブダペスト・ホテルの&yのレビュー・感想・評価

4.3
【2014/6/14:シャンテ】
廃墟遊園地のブレーキ壊れたジェットコースターに乗ったつもりでウェスの紙芝居劇場的世界に翻弄されて楽しむのが良し。
何よりウェスさんの画へのこだわりは偏執狂的、ホントにすげーとしか言いようがない。過去作と比べても明らかにネクストレベル。

わたし自身も職業柄「左右対称」や「等間隔」なんかには敏感であり、例えば路駐してる車を見てさえ「あの赤いセダンが白のワゴンなら対称になるのに…」「そこのクラウン!あと10cm進んで!そしたら等間隔!」などと朝から晩までストレス感じてる変態ですが、ウェスさんの画作りはそういうストレス皆無。というか度を越してる。時折ここはなぜ?とちょっと引っかかるとこがあるかと思いきや、それは話運び的に注目させたい部分であったり違和感出したい箇所であったりと、ストーリーテリング上ちゃんと機能させてるあたりもニクい。
しかしこれ撮るの大変だろうな〜、ミリ単位の調整修正をしまくってるはず。その美意識で生きづらくないですか…?と勝手に心配してしまいます。
もう言われ腐ってるけど、毒入り砂糖菓子みたいな世界にはさらに磨きがかかり、30代半ばを過ぎたわたしのようなババアでさえ「カ…カワイイ…」と思わずつぶやいてしまう。イイ歳こいてカワイイものに胸キュンしてる場合じゃねーだろと思いつつも、これって(監督としては若手とはいえ)40過ぎのおっさんの脳内で醸成された世界なのだ…と思うとちょっと元気が出るような気が、したりしなかったり。
次から次へと手品みたいに出てくる豪華キャストの面々も祭り感満載。撮影現場では「らしい」イメージと乖離したエドワード・ノートンやレア・セドゥなんかがお互いちょっと恥ずかしそうに「あ、どうも、おはようございます、あら意外と似合ってますよ」「いえいえそちらこそ」なんてやってたりするんだろうかと考えただけでもう胸熱。ティルダさんはもはや仮装。
一応ストーリーあるし、町山さんの解説を聴くと本作の深淵に触れることができるけど、個人的にはもっと感覚的に、入れ子構造の箱庭へ迷い込む方が楽しめると思う。
他に重要な新作や特集上映が山ほどあるというのに、なんだかんだで3回観た。わりと中毒。こりゃ次作も楽しみだ。イケメンウェスさんがストレスによる円形脱毛症にならないか気を揉みつつ、今後も観続けたいです。
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