継

キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャーの継のレビュー・感想・評価

5.0
刺客の凶弾に倒れたフューリーは
偽装工作の末に手繰り寄せた
「ある秘密」をキャプテンへ託し
”誰も信用するな” と言い残し, 息絶えてしまう

70年の歳月が変えてしまった
正義の概念, 恋人, 旧友 .
逃亡犯として追われるキャプテンは
インサイト計画を阻止する為, 己の正義と友情を守る為に
信念を賭けた戦いへ身を投じていくー.


先日、クリス・エヴァンスがMARVELにおける全撮影の終了をTwitter上で報告、契約延長も行わない旨を表明しました。
これによりキャプテン・アメリカの物語は正式に幕を下ろす事になります。
本作へのレビューは既に書いていましたが、この発表を機会に書き直す事にしました。前にいいね!を下さった方々、申し訳ありませんm(__)m 。
長文になってしまいましたが、宜しかったらおつきあい下さいm(__)m。

本作はルッソ監督によるMARVEL第1弾。
『前作』は第二次大戦中という時代の古さも災いしてか
佳作ながらもMARVELとしては地味な印象が先立ち、
次作『アベンジャーズ』では、空を飛び、ビームを放ち、緑のモンスターに変身しては敵の足掴んで地面にペシペシ叩きつけるww、超人ヒーロー達のCG活劇に無理矢理引っ張り出された感が色濃く、損な役回りに終始した印象、
本作は公開前から、ほぼ同時期公開だったスパイダーマン(アメージング) に話題性も上映館数も遠く及ばず、加えて現在へ続くアベンジャーズ・シリーズの構想上、アイアンマンに比肩する存在へのジャンプアップを課せられるという重圧を背負っていました。が、いざフタを開けてみれば、そんなネガティブな状況を “左から失礼!” とばかりに一気に追いやり、ひっくり返してみせた見事な出来映えの逆転ホームランでした。

これまでさしたる実績も無かった(失礼!m(__)m)ルッソ兄弟とそのチームが本作で見せた生身の格闘シーンやパルクール、カーアクションの数々は、近年のアクション系作品を見渡しても出色の出来と思われるほどに目を奪われるもので、
船上の敵を演じた本物の格闘家ジョルジュ・サンピエールや本作の “政治サイド” で『大統領の陰謀』,『コンドル』へオマージュを捧げるべく登場するレッドフォードの起用と併せ、このチームの本物志向を表す意味で上述のCG活劇とは本当に対照的です。

更にこのチームは、氷漬けだった70年の間に実際に起きた史実をキャプテンへ投げ掛け “MARVELのヒーローもの” であると同時に、本気の政治スリラーたる顔も本作に併せ持たせます。
『大統領の陰謀』で描かれた部屋の盗聴をタイプライターで伝えるシーンを、フューリーがスマホへとアイテムを更新して模倣し、
同時多発テロ以降のNSAによる監視プログラムを彷彿とさせるヒドラのインサイト計画を、スノーデンよろしくキャプテンが暴くといった具合に、その骨子の多くはフィクションではなく現実社会に則したもので、このシリアスな二面性は後にライアン・クーグラーの『ブラックパンサー』へ継承される事になります。

驚くのは、第二次大戦で犠牲となった旧友バッキーに、ベトナム戦争の悲惨な実態を告発した帰還兵に由来する呼称 “ウィンターソルジャー” という仮面を被せて、反戦を主張する敗れた兵士として英雄たる勝者・キャプテンに対峙させる、この着想の凄まじさ(@_@)!
原作に既にこうした意味合いが込められていたかは分からないけれど、まるで “俺もオマエも人を殺した事に変わりないだろう?” と言わんばかりのその構図に痺れる事しきり。

己の正義と友情の狭間で苦悩するも『前作』では守護者ですらあった旧友とは戦える訳もなく、盾を棄てるキャプテン(T∀T)。
この友情を重んじる姿勢は次作『シヴィルウォー』でも顕著で、良くも悪くも己の信念を曲げない頑固さがトラブルの起因にもなるわけだけどf(^_^;、
ただ、そうした各キャラクター像とか互いの関係性の掘り下げ方がハンパないこのチームがヘンなブレた描き方をするわけが無いって、自分は全幅の信頼を寄せてしまっているから、あんな『インフィニティウォー』の衝撃を目の当たりにして凄まじい喪失感に苛(さいな)まれても、来春の『アベンジャーズ4』に僅かな希望を持って彼等=チーム・ルッソに期待せざるを得ないわけです。。。


歴代政権が隠蔽してきた “ペンタゴンペーパーズ” をリークしたエルズバーグとルッソ、その最高機密の出版差止めを迫る国家権力に怯まず報道の自由を盾に出版に踏み切ったポスト及びタイムズ紙。
ウォーターゲート事件の全容を世に晒したウッドワードとバーンスタイン、彼等をサジェストした“ディープスロート” ことマーク・フェルト。
そして、NSAが世界規模の盗聴~監視プログラム
“PRISM” を構築、実行している事を暴露し、現在も戦い続けるエドワード・スノーデン...

“…自由を得るための代償は大きい
僕は喜んで戦う、君達も同じ想いだと信じたい”
シールドがヒドラの巣窟となっている実態を暴露した、このキャプテンのスピーチは、彼が氷漬けだった間に↑自由の為に戦った史実の代弁に聞こえると同時に、ロシアゲートが囁かれる現在のトランプ政権へも効力を失っていない様に響きます。
未だ現役のウッドワードが著して注目を集めたトランプ暴露本「FEAR」の、 “フェイク” とは明らかに異なる信憑性はどのみちトランプ支持者には響かないだろうけれど (読んでないだろうしネ(T∀T))、来月に迫る中間選挙は僅かな期待をもって見守りたいところ、です。

原作コミックスを踏襲しながらも、時に解離しては現実社会を映す鑑(かがみ)として独自のストーリーを紡いでくれたチーム・ルッソ。
来春公開となる『アベンジャーズ4(仮)』で描かれるであろう最後は、願わくば「最期」ではなく、
キャプテンらしく爽やかに駆け抜けて行く姿であって欲しいです
“左から失礼!” って。
ε=ε=ε=ε=┏(°-^ゞ-☆
継