てづか

白痴のてづかのレビュー・感想・評価

白痴(1951年製作の映画)
5.0
序盤、那須妙子を演じる原節子が出てきた瞬間、空気が変わったのを感じた。
ただ一言「美しい」だけではおよそ表現出来ないほど美しく、貫禄、威厳、気品溢れる立ち居振る舞いから目が離せない。私はもはや原節子の虜になってしまったのかもしれない。原節子の一挙手一投足に目を奪われ心を奪われ、原節子のことをもっと知りたいという気持ちに駆られている。
原節子が好きだ。

「あなたの目はどこかで見たことがあるんです」と言われた次のカットの原節子の瞳の輝きといったら!!!それをちゃんと見せたいものとして映像に閉じ込める黒澤明監督すげえや。


パーティーの場面で1文無しになる妙子に対して「僕が引き取ります」と1番欲しかった言葉をあげるところがとても好き。なにもなくてもただの妙子でも、必要として欲しかったんだなあって。でもそれをおとぎ話と理解しちゃえて尚且つ割り切っちゃえるところが妙子さんの不幸の全てなんだよな。妙子さんみたいな人は簡単に何もかも捨てられるけど、何かを得るのは死ぬほどたいへんなんだよね。分かるよ。切ねえ〜!!!!!

純粋すぎる思いを自分みたいな汚れた人間が台無しにはできないっていう妙子の気持ちもよく分かる。心の底から一緒にいたいのに、自分はこの人みたいな人とだけは一緒にはいられない…そんな身を引き裂かれるような悲しみが伝わってきた。

でもね、妙子さん。あなたのそういう、悲しみをどんなかたちでも受け止めなければ気が済まないところが彼の目には高潔にうつったんだと私はおもうよ。不幸そうな瞳が、幸せになろうとも思えないほど不幸なその業を背負った瞳が、何よりも美しい。ただ、自分の悲しみは受け止められても、亀田の分までは受け止められなかったんだなあ。

あ〜これ、小説も読みたい!買おうかな!
…と思ったらその時既に行動は終わってるんだッ!
"小説を買った"なら使ってもいい…
と心の中のプロシュート兄貴が説教かまして来たのでAmazonで小説を買いました。

この映画の三船もカッコよかったけど、なんだか難しそうな役柄だなあと思いました。どうしても原節子と森雅之に目がいきがちだけど、あべこべな感情に苦しむ男をとても上手に演じていて、森雅之さんと話す時の素直に笑えない感じとかがとても良かった!

なんかもう妙子さんに感情移入しすぎて、映画を楽しんでいるのかストーリーラインを楽しんでいるのかただただ登場人物たちの心の機微を楽しんでいるのか分からなくなってきた。私にとってこの映画はどんな立ち位置なんだろう?映画を観るってなに?自分のこの映画の見方は正しいのかな?

絶賛迷子になりました。

第2部。第1部の段階でも妙子さんに感情移入しまくってたのに、更に第2部で綾子を崇拝する妙子さんの気持ちがわかりすぎて辛かった。自分に無いもの全部もってると思った人が、そうじゃないただの女だと知ったらそりゃそうなるわね〜……。

ああ、女ってどこまでも面倒くさい。
面倒くさい女にならないことを夢見て生きてきたのに私もこの体たらくだから、やっぱり女に生まれたからにはとことんまで面倒くさく生きるしかないのだと思う。


色んなこと考えちゃうな〜

とりあえず、無理な話ですが、完全版をちゃんと観てみたかったなァ。
てづか

てづか