OASIS

鑑定士と顔のない依頼人のOASISのレビュー・感想・評価

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
3.5
父母を無くした豪邸の令嬢からベテランの鑑定士に家財道具一式を丸ごと査定してほしいとの依頼が来る。
興味を持った彼だったが、肝心の依頼人は部屋から一歩も出ず顔さえ見せようとしないのだった。次第に彼女に惹かれていく彼だが・・・という話。

「ニュー・シネマ・パラダイス」の名匠ジュゼッペ・トルナトーレが描くミステリー。
ジェフリー・ラッシュ主演、ドナルド・サザーランド、ジム・スタージェス他。
エンニオ・モリコーネの音楽が盛り上げる、格調高く美しい映画だった。

ジェフリー・ラッシュという俳優ありきで考えられたという脚本は、正に彼無しでは成立しないであろう結末へと向かい静かに悲しげに真相へと導く。
実にスローなストロークで、ゆっくりゆっくりと伏線を張りつつどんでん返しまで持っていく。
このスロー加減がやや単調かと思ったが、絵画や美術品の美しさが丁度いい目の保養になりそれなりに引き込まれた。
見応えもあります。

しかし、正直このどんでん返しも読めるには読める展開。その後の彼の心情を思いやるととても綺麗に騙されたという気持ちではなく、只管悲しくなるばかり。
だから全てが繋がっていく感覚というのは薄れてしまって、それまでにどっぷりと主人公に感情移入してきた分どんよりと深い闇に突き落とされるような後味が残った。

二度目を見たらまるっきり印象が変わってしまうようなタイプのミステリー。
ネタバレは厳禁。

手袋を棚にビッシリと綺麗に並べていたり、ちょっと反論されたらすぐに感情的になったり、神経質な老人を演じさせたらジェフリー・ラッシュの右に出るものはいないですな。
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