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アデル、ブルーは熱い色のハターのレビュー・感想・評価

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)
4.2
様々な印象を与えられながらも、純粋な恋愛の美しさだけが頭の中を駆け抜けていきました。
地味で無垢な少女は、すれ違ったブルーに心を奪われ、やがて2人は極々自然に惹かれ合っていき、意のままに愛し合う。その冷静と情熱がまみえた模様を惜しげも無く映し出す。至近距離の一人称視点で見る肌の質感や光に当てた産毛がリアリティを産み、指先で肌を摩る仕草と音が官能を最大限に演出している。遠慮を抜きにした描写の説得力にはただただ圧倒されました。

演出のひとつとして、要所要所で青色がシーンを物語る。明るい青や、暗い青。今まで当たり前のようにあった青が突然消えたりもする。至る所で現れるアデル×青には、何かしらの伏線が張られていました。空や海など、人間にとって密接な関係にあるこの抽象的な存在が本作のテーマと相まみえた結果、とても豊かで深みを生み出していると思いました。
また、序盤でストリートミュージシャンのハングドラム演奏がそのままBGMになっていく件は美しく、心を揺り動かされました。ハングドラムは演奏性の高さとシンプルな音階から成り、どこか物悲しげな音色が特徴。物語を予期させるかのような手法でした。

強く印象を与える芸術的なシーンの数々に視覚、聴覚がスクリーンの世界に引きずり込まれ、まるで昔の名画を見ているかのような感じを覚えた瞬間もありました。同性愛者でなくとも共感を覚える力を持っているのは、ただ真の恋愛がそこにあったからでしょう。
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