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馬々と人間たちのハターのレビュー・感想・評価

馬々と人間たち(2013年製作の映画)
4.0
これは想像つかなかった。そんな物を見ました。
他に類を見ない歴史と環境を題材にしたこの映画は、馬と人の関わりの中で巻き起こる事件をいくつかのエピソードとして進むのですが、まあその内容たるや、軽く予想を越えてきました。フライヤーの謳い文句に誘われて、これはほのぼのコメディ後に感動かなと考える程度でしたが、蓋を開けるとまあビツクリ。そこにあったのは、ただただ本能のままに生きる馬々を前に翻弄されゆく人間の姿。性欲、アルコール、憎しみ、愛の果てに人と馬はことごとく死を見る事となる。アイスランドという雄大な景色の裏で暗黒が口を開いて全てを飲み込んでいく、そんな恐ろしい映画でした...?

いやしかしです、この映画、不思議な事に其処彼処でくすくす笑えるんです。こんな恐ろしい映画なのに至るシーンで頬が綻ぶんです。マジックだなあ。いやー、これぞ演出力かしらと思うばかり。

世界一平和な国と言われるアイスランドで古くから共存する人と馬。アイスランド馬は10世紀以上も原種が守られている純血馬であるらしく、その事実はこの国でいかに人と馬の関係が密接であるかを象徴しています。絶海の孤島とまでは行かずとも、混じり気のない自然に溢れた雄大な大地が物語の舞台。画の1つ取っても深みが増し、シーンが映える。今年日本公開だった『LIFE!』の画の美しさに引けを取らない。監督が舞台演出家で馬好きというだけあってか、とにかく引っ切り無しに目が楽しい。シリアスを用いた天丼演出は個人的に美味!
アイスランドの現実は、遠く離れた地に住む私にとって新鮮かつ衝撃的で、寓話のようなこの物語の終着駅は一体どこなのかと考えてしまいました。半ば未開の地であるこの国の姿を目前にしているだけで楽しめる。

この映画の存在を知ったのは近しい人からの紹介でしたが、もしかしたら自発的に見に行く事はしなかったかもしれません。(公開劇場の少なさと極々私的な理由なんかもあり...)しかし見終えて、行ってよかったーと思えています。この作品を誰かに紹介するとしたら「人と馬の愛と血と性欲が溢れるコメディ映画(ど直球&適当)」とでも言えばいいのか...。作りはユニークだし、画はアートで、知識的に学べる所も沢山ある。もし仮に私が高校教師だったら、これ授業で流しちゃうかもしれない。そんなレベルの馬映画でした。
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