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レッド・ファミリーの教授のレビュー・感想・評価

レッド・ファミリー(2013年製作の映画)
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キム・ギドクの監督作品は、プロットに圧倒されるも、演出の部分だったり画面づくりの部分だったりで「ん?」となりがち。それと比べてまったく無名の新人であるイ・ジュヒョン監督は、手堅いと言うべきか、この突拍子もない脚本を無駄なく演出していて「普通に面白い良い映画」になっている。

コメディとして笑える部分。シビアな現実に打ちのめされる部分。「家族」として思わずホッコリしてしまう部分。と、大雑把に並べても比較的感情が忙しく揺さぶられてしまう。
そのひとつひとつが、ツボを得た演出になっているので、全く退屈はしない。

加えて、主人公の家族を指揮する「金物屋の主人」を通じて「非情」の奥にある「人間性」もたげてくる感情の複雑さ、をより際立たせた描き方により、多層的な感情の織り込まれた物語を感じれる点も秀逸。

作中にある逆説や、捻れから、立ち昇ってくる「愛」というのを常に描き続けているキム・ギドクらしい脚本に、シンプルでオーソドックスな演出のバランスが、見事にマッチしてわかりやすく感動できる。

強いて苦言を述べるとすれば。
各シーン、各エピソードがあまりにもテンポ良く進み過ぎるので、出来事への思い入れがなかなか生まれないまま展開し過ぎてしまうのと。それ故に事務的に見えてしまう。加えてラストの展開は「なんとなく誰もが納得する」形に落とし込んだ、という感じが作為的に見えたりする、というのは少し感じた。
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