Bellissima

パラダイス 希望のBellissimaのレビュー・感想・評価

パラダイス 希望(2012年製作の映画)
3.5
『パラダイス 希望』@ユーロスペース

“楽園”を求める3人の女たちを描くパラダイス三部作の第三作。

ティンエイジャーを対象とした夏休みダイエットキャンプに参加することになった13歳のメラニーは施設の中年男性医師に心引かれる。父親ほど年の離れている事は彼女には問題ではない。彼女に対し優しく接してくれる初めての「大人の男」であることが重要であるから。好意を察すると注意深く距離を取るようになる医師のつれない態度に恋心は肥大していく。気持ちばかりが先走りするメラニーは・・・思春期の少女を主人公にしたザイドル版青春映画。

“この人しかいない”と思い込んでしまう恋心は誰にでもあるなと過去にしまっていた気持ちを思い出させてくれます。「恋愛」という行為そのものに対する憧れ、周囲に渦巻く「性」、欲望される「女」への渇仰、追いかければ追いかける程に離れていく相手の気持ち、ままならない苛立ちによる奔走&迷走の最果てで"恋に恋している”自分を現実視しなければならなくなる。

愛とは相手を受け入れその対象の為に自分を犠牲に出来るか、自分主体の恋との違いは見返りを要求しない自己犠牲にあり。メラニーがその事を分るまでにはまだ幾つもの経験を要するだろう。ザイドル監督は非日常の舞台に祝祭(夜な夜なのバカ騒ぎや脱走)を配し未熟な存在である主人公が試練を越えて成熟した存在へと変貌を遂げる節目を描いた。その儀礼にこそ人の成長があり同じパターンを繰り返すだけでは人生の(パラダイスへの)旅はそこで止まってしまうと。彼女がこの先 幾多の旅を経て手に入れる歓びの光を「希望」と題したのだと感じた。

メラニーに対する観察眼や心理描写は、突き放してはいるが決して見捨てない慈しみも垣間見せる。メラニーの甘酸っぱいひと夏の思い出に寄り添う一編。

雑感 作品全体のセンセーショナル指数は低めでしたが、おデブちゃん達の横並びの構図やおもちゃの兵隊の様な行進の絵図の面白さ◯。終盤の不思議な気配がまといつく“変態さんいらっしゃい”シーンは中々のインパクト。くんくんするって。。
Bellissima

Bellissima