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パラダイス 希望のemilyのレビュー・感想・評価

パラダイス 希望(2012年製作の映画)
4.3
母が旅立ち姉の家に預けられた13歳のメラニーは青少年のためのダイエット合宿に参加し、親子ほど歳の離れた合宿所の先生に恋をする。まんざらでもない先生の態度に無邪気に距離を詰めて行く彼女だが。。

今作も長回し中心で、光と白の配合で先にある、希望をみせる。白い壁の間光の中に解けるように消えていく娘を見送る姿から始まる。

カラフルなTシャツの横幅の大きな子供達が壁に並ばされた絵、トレーニングのコミカルすぎるシュールな絵、小さな部屋に二つと二段ベッド、詰め込まれた四人の少女達、横になる二人や三人の少女達を足元から大きく捉える絵、繰り返される白い壁の前のオレンジの椅子に座るメラニー、全てが考えつくされたユーモアと美が融合したポストカードのようで、色彩感覚も絶品の美しさである。少しずれてたら目にも止めないようなシュールな絵を独特の構図と配置で、目に焼き付ける美的感覚に釘付けになる。

メラニーと先生の微妙な淡い恋。あいまいなそぶりで彼女をその気にさせ、純粋無垢な少女は迷いなく彼に真っしぐらに突き進む。その気にさせたのは大人であり、そのふくよかなボディに惹かれてしまった責任を放置し、大人という枠組みにしっかりと境界線を引いてくる。しかし彼女には通じない。ふくよかだろうが、年齢の壁があろうが、それすらも刺激に感じて気持ちに忠実なのだ。その姿は滑稽であるが大人の二作を観た後では、その素直で満ち足りた未来が希望に光るのだ。

淡い恋に心ときめかせ悩み、自己完結して、それでも突き進み、生活の中心が好きな人でいっぱいになる甘酸っぱい初恋の味。当然ストレートなラブストーリーではないが、余韻は悪くない。しっかり恋してしっかり失恋する。一つの恋がしっかり終わることで、そこには希望が映るのだ。また同じように誰かを好きになり同じ過ちを繰り返すだろう。欲望に忠実になることは恥ずかしいことではない。それは人間らしく生きるということだ。
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