このレビューはネタバレを含みます
併映 「たかが世界の終わり」
若き天才グザヴィエ・ドラン監督の初のサスペンス。
トムは亡くなった同性の恋人ギョームの葬儀に出るため実家の田舎の農場へ。
ところが母親はギョームはサラという恋人がいるはず。どうしてサラは来ないのか?と執拗に言う。
兄のフランシスには、母親には本当の事を言うな!と脅される。
母親の妙なテンション。
暴力的な兄。広々とした農場が、逃げ場がない閉塞された空間に変わっていく。
フランシスに暴力を振るわれ、怯えながら、一方では惹かれるトム。
タンゴシーンから二人の間に何かが生まれたことが感じられる。
トムは、逃げたいと思う気持ちと暴力的な支配に身を委ねたいという相反する気持ちに揺れる。
逃げる為にサラを呼びつけたのに、サラに逃げようと言われると、自分はこの農場で必要な存在だから、と明らかにイッてしまった眼でベラベラ話し続ける。この時のドランの演技がいい!
フランシスとサラがいい感じになると、嫉妬を感じてしまうトム。
しかしバーで聞いたフランシスの過去の怖ろしい行状を聞き、遂に逃げ出す。
フランシスに追いかけられながら、車を奪い、走らせ、やっと都会の光が見えてくる。こんなに、都会のネオンが暖かく見えるとは。
だが、これで終わりではないだろう。トムはフランシスに会う前の生活には戻れまい。
「10月のトウモロコシ畑はナイフのようだ」
危険だとわかっていても逃れられないだろう。