ハター

トム・アット・ザ・ファームのハターのレビュー・感想・評価

3.5
私にとって本作が初めてのグザヴィエ・ドランでした。今をときめく新鋭監督である事は存じていましたが、遅ればせながら観賞。そして率直な感想を言うと、「これ本当に齢25の人が撮った映画なのですか?」です。
意味を感じさせる演出の数々、構成や配色、このストーリーに相応しい要素がしっかりと組まれていると同時に、キャスティングの強さがなお引き立てる。そしてなにより妙味を感じるのはグザヴィエ・ドラン自身。一体彼は子供の頃、何をして遊んでいたのだろうとか、学校から帰ってどこへ向かっていたんだろうとか、どんな場所で毎日どんな風景を見て育ったんだろうとか、夜は何時に寝て朝は何時に起きていたんだろういたんだろうとか。この映画を見た事によって、小さく細かい事が気になって仕方ない。愛、憎悪、倒錯。目から得たものが奥底へ直接的に語りかけてくる感情の表れ、決して想像や模倣とは捉えられない巧さとリアルをそこに見ました。
もしかしたら彼は映画人という括りに属さない真のアーティストなのかもしれない。きっと映画以外の媒体で表現したとしても、きっと多くの人を惹き付けるのではないでしょうか。ともかく、グザヴィエ・ドランの才能を確と見せつけられた今、今後彼の事が頭から消える事はないでしょう。
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