足拭き猫

トム・アット・ザ・ファームの足拭き猫のレビュー・感想・評価

4.0
前情報なく観たため、これってホラーだったんだね、と最初から最後までビクビクしてしまいました。「10月のとうもろこし畑は凶器だ」。乾いた繊維質たっぷりの葉っぱで皮膚をスッパスパ切り刻まれるような痛みが画面越しに伝わってくるような。
誰もいないがらんとした家、たくましい体は見えるけど顔がなかなか現れないクソ野郎フランシス(「たかが世界の終わり」でも兄はクソ野郎だったなー)、タンゴの場面などこれから何かが起こりそうという連続した緊迫感と、ブラックアウトにより時間経過がばっさり切られることで余計に恐怖が増す。のちの母親の描かれ方や助けにきたと思いきやの彼女の反応に至っては覚悟をいたしました。
金髪なのに眉毛と髭はまっくろというグザヴィエ・ドランが、なんだか「シャイニング」のジャック・ニコルソンを思わせた。ぎゅっと握られるハンドルとか定まらない視線、グーっと締められる口元にこちらも力が入る。
最初に「ひまわり」のテーマ曲が流れたので、てっきり舞台はフランスかと思いきやケベックだったのか。フランシスのジャケット模様にやっと合点がいった。