ハター

罪の手ざわりのハターのレビュー・感想・評価

罪の手ざわり(2013年製作の映画)
4.4
良い映画を観た。こういう作品待っていました。要点で語る展開、ピントを操った独特な技、美術で見せる映像美、そして血生臭いアクション。全てが強烈な印象を与える作品だった。
冒頭、「さあ、おっ始めるから目ん玉見開いてしかと見れ!」と言わんばかりに目に飛び込んでくるトマトの雪崩は、まだ起きかけの脳みそのスイッチをオンに。緊張を高めるこのつかみ、最高です。ストーリーは4部構成だが、各話毎の途切れ目を極力無くす為か、申し訳程度だが線結びになっている。テーマを曇らせるような台詞や演出は排除して、人間の心情を緻密なまでに表し、それが効果を得ての矢継ぎ早な展開が目と意識を奪う。
生地を伸ばして叩いて塩を振り、充分に下ごしらえをした上で繰り出してくるバイオレンスアクション。これは予想外だった。ジャ・ジャンクーはそこでエンタメを見せてきた。この点が無ければ鬱々とした社会派映画で終わってしまう所だが、やはりここは巨匠と言われる所以か。(特に1話目、マカロニ・ウエスタンのオマージュ?と思ったのは私だけでしょうか・・)
ソフトフォーカスの多用も深く印象に残る。精神の安定に欠いた人間の視点を表現しているのか、目前の人の顔に焦点が合っていないような画などおもしろい手法。合間合間に見せる美術演出は色と構図の組み合わせ方がとても巧みだ。物語の中で美として映えながら、貧富の差を一つの全体画で表すような場面などは台詞以上に強さを感じた。理由なき殺生は罪か。では理由があれば罪ではないのか。誰が正しくて、誰が間違いか。道徳心に問いかけてくる。が、何にせよまずは楽しんだもん勝ちです。考えるのは後回し後回し。
いち映画作品として秀逸な出来栄えでした。ビバ!ジャ・ジャンクー!
ハター

ハター