ハター

それでも夜は明けるのハターのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.0
まずは祝オスカー受賞!
自由黒人として人並みの生活を送る主人公がふとしたきっかけから拉致され、奴隷として過ごす12年間を描いている。不条理な展開、恣意的な権威主義者の横行、差別という範疇を超えた残虐行為、非人道の限りを行なう様子を克明に表していて、エンターテイメント性はほぼ皆無。泣ける感動作を期待していると見事に度肝を抜かされる。楽しい映画かなと思いきや、メッセージ性を強く押し出した社会派作品と言う点は、まるで『ランボー 最後の戦場』のよう。
製作、出演もしているブラッド・ピットは、今迄タブーとされてきたテーマを扱った本作をどうにか世に出す為に尽力したとか。演者としての姿は美味しいとこ取りに見えるが、リアルな本人の言葉を役を通して代弁しているとも捉えられる。とは言え、一番美味しいのは鬼畜奴隷主を演じたマイケル・ファスベンダーだと思う。あの変態っぷりは素晴らしかった..!
カット割りも印象的だった。序盤の奴隷運搬船の動力部のアップとけたたましい動作音は不安を煽り、夕暮れの寂しげなカットが陰々滅々たる様子を物語っている。また、とあるシーンで奴隷達が声を揃えて歌うフィールドハラーはやはり圧倒的な説得力で見ていて胸が熱くなる。ブルースの起源、ここにあり。
アカデミー賞の有力馬だったゼロ・グラビティが宇宙に放り出されて完全な孤立を描いてた作品ならば、こちらも為す術もないのないまま売買用の奴隷として誘拐され孤立無援。そして双方とも、その場に自分自身が身を置いているかのような感覚にさせてくる。場所も時代性も対極な両作の共通点がこんな所にあったのはおもしろい。
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