アルバート

それでも夜は明けるのアルバートのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
5.0
(2014年3月29日に別サイトで書いたレビュー)

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話の流れに粗があるが質の高い作品

 シークエンスとシークエンスの繋がりがチグハグで感情の抑揚が途切れしまっていた箇所があったが、『それでも夜は明ける』は高水準の映画だった。特徴的だったことを羅列したいと思う。
 二つの事を同時に表現する手法がとても印象的だった。農園主の説教の声にかぶせてイライザのすすり泣く声を流したり、主人公の背後のピントの合っていない所で男たちが首を吊られたりと、何かが起こっている裏で何かが起こっているという構図が多く見られた。
 トランジションが上手く、それに伴う音のミキシングも絶妙だった。しかし音楽は過剰だった。監督のスタイルにも合ってない気がする。
 フレームをとても意識していると感じた。対象物を必ずしも真ん中に置かず、カメラを動かさないショット。ピントの合っている所と合っていない所で起こる二つの情報が 両方同時にフレーム内に収まっている 等。特徴的である。ところで、被写体をクロース・アップで 尚かつ 真ん中や3分の1ラインに置かない撮影方法は『レ・ミゼラブル』と似ている。『レ・ミゼラブル』の時もそれを批判していた人がいたが、それと同じ理由で『それでも夜は明ける』は撮影賞にノミネートされなかったのだろうか。
 その他に撮影で気になったのは 被写界深度(ピントが合う範囲)が極端に浅い事だ。接写も印象的だったし、ピントが合っていない部分も有効に活用していたので、この浅さで正解だったと思う。しかし、焦点距離が十分にあるショットで所々役者の顔にピントが合っていないのは気になった。
 最後になるが、ストーリーにもう少し深みが欲しかった。どういう気持ちで白人は奴隷を行っているのか、主人公の妻や子供はどのような人物なのか等を膨らませば、話に深みが出て、より濃厚な映画になったであろう。まあ、深みを感じられなかった原因は脚本家だけでなく私自身にもある。私は作中の英語を100%理解できず大意しか掴めなかった。言い回しが小説的で一文に詰め込まれた単語も多かったのと、宗教的な単語や象徴に こもった 思いや考えを知らなかったためであろう。しかし、言葉の一つ一つは分からなくとも心は動かされた。目や表情の演技が非常に力強く、私の心を鷲掴みながら訴えかけてきた。
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