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それでも夜は明けるの&yのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.5
【2014/3/12:TOHO渋谷】
全然夜は明けてないじゃん。。

サイドストーリーはいくらでもあるはずなのに、そちら側を同時進行で見せたりしない。ただただ閉じたシステムに組み込まれたソロモンの目線に徹し、そこに観客を引っ張り込むのにスティーブ・マックイーン印の不親切演出(大好物)は好相性。情報少ないからすごい不安になるもん。
クレバーで強い信念を持つソロモンは、様々な価値観を持つ白人たちのことををよく見ていて、彼らに期待することもあるけど、いつも裏切られて。もともと身を置いていた西洋文化の象徴でもあるバイオリンを壊し、黒人霊歌を口ずさむまでにアイデンティティが崩壊してしまう彼に感情移入して辛いが、結局は黒人内にも存在する格差(これも差別)によって救われたわけで。ソロモンの夜だけは明けたけど、自由黒人ではない“ただの黒人”には、もともと夜しか存在しないことを示したパッツィーとの別れ。彼は悪法により拘束され、悪法により解放されただけというアイロニー。
なので、差別を扱ったありがちな作品群と比べると、すっきりしたカタルシスはなくモヤモヤが残る。監督は、一元的には語れない問題の複雑さや人間の危うさ、巨大システムに従う怖さといったテーマの普遍を映画にしたかったのかな。夜が明けてないことを宣言した黒人監督がこの作品でオスカー受賞した意味は大きい。

…やっぱ邦題ダメじゃん!!!
素晴らしい作品なだけに、この邦題は残念すぎる!
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