ninjiro

そこのみにて光輝くのninjiroのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.1
昔、お父ちゃんを手伝って、
町に魚を売りに行ったんだ。
終わった後に、アイス買って貰って、
一緒に食べるのが楽しみで。

違う味のアイスを二つ買って、
はんぶんこして食べたんだ…。


何処にも行く当ての無い男。
救いの無い家を身体で支える女。
誰しも幸せを儚く夢に描く。

男にとってそれは山で働く事。
彼の誇りであり、生きる証。
山の音を聞いて生きて来た。
今はその音が、毎夜彼を苛む。

女にとってそれは家を守ること。
どんな惨めな暮らしでも、
家族はここにしかいない。
大好きだった父の声が、
今では重くのしかかる冷たい石のよう。


お前がそんな女だから抱くんじゃない。
俺が初めてお前を見た時、
そこで、美しく咲いていたから。

不思議なもんでそれからはお前の事ばっか。
正直言って、こんな風に遭わなかったら、
一生お互い知らない者同士だっただろうな。


ずっと側にいられるかどうかわからない。
確かな保証なんて、何も無い。
現に、俺の両手には何も無い。
それでも、今はお前の側に寄り添う。
何も持たない俺の手は、お前に触れるだろう。

ごめんな、
俺ができる事なんて、
他に、何もないんだ。
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