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アバウト・タイム 愛おしい時間についてのtakのレビュー・感想・評価

3.5
リチャード・カーティス脚本の映画は好きなものが多いんだけど、監督も務めた3作品のうち唯一観ていなかった「アバウト・タイム 愛おしい時間について」に挑む。ジャケット写真から勝手にラブコメであると認識していた。映画前半は、タイムトラベルできる能力を代々持つ家系の冴えない青年が、その力を使ってラブを掴むお話。そして映画後半は父と息子のいい話になって、温かい気持ちになれる。

確かにテイストはかなり好み。台詞のひとつひとつが、言われてみたい、言ってみたいと思えるものが多くって、それぞれの場面のやりとりが愛しく感じられる。
「今日が最悪の一日だったんなら、セックスで慰めてあげようと思ったのに」
「愛してるをスピーチで言い忘れた」
タイムトラベルできる能力を使って、失敗をやり直すことでリピートされる場面は確かに楽しい。初めての彼女とのベッドインを繰り返す場面には思わず笑ってしまった。ケイト・モスの展覧会に居座る場面のいじらしさ。

でもねぇ、ちょっと男性本位の身勝手な話にも思えてしまうし、主人公をズルいと感じる場面が多い。同じ日を繰り返すことができるから、二度目で深みを知ることができるとか言うけど、それができない俺らにそれを言われてもねぇ、と素直に受け取れない方もあるのでは。その能力がある故の葛藤や悩みが欲しかったところ。登場人物がいい人だらけだから、映画全体として救われている面もあるかもしれない。LGBTやセックスに関係する台詞の際どさは、受け手によっては不快に感じやしなかな、とも思った。一日一日を最後のつもりで大事に生きろ、というメッセージは確かに大事なこと。

主人公を演じたドーナル・グリーソンがなかなか冴えないけどいい人に見えてこなかったのも、僕が素直じゃないからなのかも(「SW」の悪役イメージ?)。レイチェル・マクアダムスの笑顔がいいね。そして何より、ビル・ナイ御大演ずる素敵な父親。息子とは秘密を共有するいい関係だけど、奔放な娘とはどうだったんだろ?とちょっと疑問に思う。
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