さいとう

冬冬の夏休みのさいとうのレビュー・感想・評価

冬冬の夏休み(1984年製作の映画)
-
個人的には、冬冬よりも妹・婷婷の物語だった。

タイトルから勝手に少年のひと夏の成長物語、スタンドバイミー的な話を想像してたけど、全然違った〜〜めちゃくちゃ当時の台湾社会を写して、でも今とも繋がる作品。
劇的なことは起こらないけれど、痛々しさ理不尽さ、色んな気持ちが詰まってる。

そして、やっぱり印象的なのは寒子の存在。

恐らく寒子は発達障害を抱えているけど、そういう概念もなく“狂ってしまった“と捉える時代。

本作では啓蒙的な何かがある訳ではなく、淡々と彼女の存在と彼女を取り巻く周囲を描く。

とある事がきっかけで婷婷との距離が縮まる。当初は“はぐれ者“同士の共感のような絆から、母子のような繋がりに変化する様子には温かさもあるけど圧倒的にどうしようもない悲しさも存在していた。

「こんな時代もあった」「ひどい」と思うのは簡単だけど、今だってそういう意識が多少見えにくくなっただけで、潜在的には同じなんじゃないかと思ってしまう。

むしろ自分とは“違う“ことに対しての憎悪、拒否反応は一層強まっている。
だからといって、じゃあ昔の方がいいとかそういう訳じゃないけど。

あと、普段あまり意識することはなかったけど、卒業後の休みが春か夏かってすごく大きな違いなのかも。

今更ながら夏卒業も経験してみたかったなあ、と思う2021年なり。

********
小学校を卒業した冬冬は妹の婷婷と一緒に、夏休みの間祖父母の家に預けられることに。新しい友達たち、家族のゴタゴタ、社会の閉塞感…冬冬はさまざまなことを経験しながらひと夏を過ごす。