ぐるぐるシュルツ

キングス・オブ・サマーのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

キングス・オブ・サマー(2013年製作の映画)
4.0
今この瞬間で、大人になりたかった。
今この瞬間で。

〜〜〜

少年と青年の狭間で揺れ動くティーンエイジャーたちが、
家出することで、また少しずつ大人になっていく物語。
テーマ自体は定番だけれど、
あの秘密基地を作る少年心のワクワク感は
やっぱり、たまらないなぁ。
懐かしさと気持ち良さが胸にすっと流れる。

その一方で、
片親である理由やジョーの精神的な抑圧などの心理的な背景にはそこまで踏み込まないことで、
仲違いしたジョーと孤独な父と重なっていく場面や
「不安にならないとだめなんだ」
といった父の台詞にも、
想像の奥行きが生まれてして、
その重たくなりすぎないバランス感がしっくりくる。

そして、
パトリックと病室の前ですれ違う一瞬の寂しさや
最後の曖昧だけど確実な仲直りの瞬間のくすぐったさなんて、
見ていて、なんだか少し微笑んでしまう。

〜〜〜

印象的だった演出は、
音や場面の心地よいリズム感です。
特徴的な太鼓のシーンをはじめとして
木を打つ音、扉を開ける音、水の音や携帯のベル。
文字通りリズミカルに効果音が鳴っていきます。

そして、それに合わせていろんな映像効果を、
気持ちよく使い分けていくのも面白い。
回転するカメラやピンボケ、スローモーション。
秘密の場所を見つけたり、湖に飛び込んだり、
妄想したり、喧嘩したり、見つめ合ったり。
そして、黄金色の草原に差し込む淡い陽光。
二人で眺める光景。時間とか、もう、止まれよって思う瞬間。

時折挟む動植物や自然の綺麗な画とは対照的に、
振り回す刃物、鼠や兎の血肉や骨など、
野生的な生への暴力も描かれていて、
森や生命への敬意も感じます。
さながら少年版『イントゥ・ザ・ワイルド』のよう。

エンドロールの
Youth Lagoonの『17』という曲も、響く。


それに
ビアジオ関連のくだりは終始面白かったです。
「座らないで緊張感を与えている」とか声出して笑いました。
悪い顔して葉巻ふかしながらモノポリーをするジョーも最高。

ジョーダン・ヴォート=ロバーツは『キングコング髑髏島』の監督でも話題になりましたよね、これからの作品にも期待!