このレビューはネタバレを含みます
アラン・カミングの演技がとてもすてきでやさしい。歌もほんとうにうまい。何を歌ってるかわからなくても泣きそうになる。
一方で結末はいかがなものか。マルコは死ななければならなかっただろうか。
ゲイカップルがダウン症の子供を育てる。それに対する差別、風当たりの強さはよくわかった。70年代はこんな社会だったのかもしれない。その事実性は伝わった。
しかし最後にマルコが死ななければいけない理由はないと思う。ポールはマルコの死を(邪魔した側の)関係者に知らせるけれど、あれはどう見ても復讐である。
あなたのせいで子供が一人死んだのですと罪悪感を植え付けている。ポールの行動は責められないし、自分でも同じようなことをするだろうなとは思う。だがポールにそうさせなければならない必然性はなったのではないか。
冒頭と同じように家出をする、だが今度は見つけてくれる人がいない、とぼとぼと夜の街を歩くマルコ。それで十分でしょう。
悪者に一撃を加えるマッチョな快楽はこの映画の余韻としてふさわしくない、と思う。
邦題の『チョコレートドーナツ』は微妙なラインよなあー。マルコとの思い出と、彼を失った空洞感を同時に表しているのはうまい。
一方で「Any Day Now」というフレーズがもつ痛切さみたいなものは届いてこない(最後のアラン・カミングの歌は『マリッジ・ストーリー』のアダム・ドライバーとも重なった)。
でもこのボブ・ディランの歌詞の話は調べなきゃわかんないし仕方がないような気はするな。英語ができないとこういうときに悲しくなる。
2020年36本目