ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品を初めて観たが、全体的に重い静寂が感じられ、独特の雰囲気だった。
ストーリーは把握しやすいがミステリー要素はしっかりしていて、終盤になるにつれてサスペンスが味わえる。
ヒュー・ジャックマンが娘を誘拐され、狂気に浸食されていく父親を好演している。
いつもながら高い演技力だなと思う。
事件を担当する刑事役にジェイク・ギレンホール。
先日、「ナイトクローラー」でのギレンホールに打ちのめされたのだが、今作はその前に観たので鑑賞時の感想を言うと、なかなか良い演技する役者だな、という印象。
「ミッション : 8ミニッツ」の時より太ったなあ、とも思ったが彼なりの今作での役作りなのかも知れない。
車の中で楊枝を咥えているシーンではライアン・ゴズリングのような雰囲気だった。
そしてポール・ダノの演技は素晴らしかった。
キャラの持ち味云々とかメソッド云々とかは分からないが、ただストレートに上手い。
他の作品ではどうなのだろうか、興味が湧く。
話の展開は妙を得たものがあるが、ギレンホール演じるロキは優秀な刑事という設定のはずなのに、刑事にあるまじき失態を重ねており、矛盾を感じる部分もあった。
これは考えすぎかも知れないが、ジャックマン演じる父親は敬虔なクリスチャンで、犯人は子供を拐う悪魔。
そこにロキ[北欧神話の神の一人]という名の刑事を入れたのには、ある意味、「傍観者としてのロキ刑事の視点で観よ」というメッセージなのかも知れない。
それから、レディオヘッドの曲がさりげなく使われていて、それも意味深に感じさせる。
私的にはラストシーンが秀逸だと思う。
好みが別れそうなヴィルヌーヴ監督の演出だが、「複製された男」や「灼熱の魂」はいつか観てみたいと思う。